三浦展『横丁の引力』
三浦展さんが東京とその周辺の横丁について論じた本である。各地の横丁を軽く案内するような本ではなく、かなりアカデミックだ。ヤミ市・花街・赤線、近代の下層社会、建築史などについての文献を渉猟し、横丁の魅力と存在意義について、骨太に論じていく。私の『居酒屋ほろ酔い考現学』も、「横丁を社会学的に考察した本としては嚆矢」と紹介されている。
ドキリとするような指摘がある。「現代はひとつの焼け跡の時代」だというのである。「昭和が第二次大戦によって記憶されるように、平成は二つの大震災と原発事故によって記憶される時代である」。さらにバブル崩壊と、名だたる大企業の衰退。平成の日本には一種の焼け跡が生まれたのではないか、というのである。なるほど、焼け跡には粗末な造りの小さな店が似合うのだ。
後半は、吉祥寺ハモニカ横丁再生の仕掛け人、手塚一郎氏が、各地の横丁関係者に対して行なったインタビューが収録されていて、これは面白いだけではなく、資料的な価値も高い。横丁愛好者、必読である。
- 作者: 三浦展
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2017/10/08
- メディア: 新書
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