橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

久留米「九十九」

classingkenji2009-10-02

せっかく福岡まで来たのだから、まっすぐ帰るのももったいない。幸いなことに、シルバーウィークだ。そこで、前から食べてみたいと思っていた久留米やきとりを求めて、天神からに私鉄に乗る。昼間は柳川まで行って川下りや散策で時間をつぶし、久留米に着いたのは五時少し前。久留米もけっこう広い町だが、今日は文化街近辺に的を絞り、店を物色。一軒目に選んだのは、この店である。
久留米やきとりの特徴は、ともかく種類が多いことだろう。鶏、豚、牛、野菜、魚介類、それに野菜の肉巻の類も、アスパラ、ネギ、オクラ、エノキ、シメジなど多彩である。自分の好きなものを好きなだけ食べることができるという意味で、料理の一つの完成型とさえいえるかもしれない。しかも安くて明朗会計だから、いうことはない。
L字型カウンター一三席と、小上がりに四人用テーブルが四卓。男性一人客もいれば、家族連れもいる。カウンターの前の冷蔵ケースには、四〇種類ほどの串が並んでいる。シシャモやうずら卵の八〇円からで、一二〇円が中心。いちばん高いのは、三〇〇円のすずめ。せんぽこ、ダルムと、聞き慣れない名前のものもある。注文してみると、せんぽこは硬めのガツのような食感、ダルムはテッポウのようだ。飲み物は、生ビール五〇〇円、瓶ビール五五〇円、日本酒四〇〇円、酎ハイ類三五〇円など。安くておいしく、くつろいで飲める、いい店である。(2009.9.20)

久留米市日吉町6-10