橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「淀橋再生酒場」

classingkenji2009-10-23

新宿西口の飲食店街は何本も縦横に交差して、なかなか全体が把握できないが、そのなかでも細い方の路地に、この店がある。一軒家を改装したような建物で、一階が立飲み。意外に広く、長いカウンターと、テーブルがいくつかあり、詰め込めば五〇人くらい入るかもしれない。古いポスターなどを貼ったレトロ風味を作っているが、さほどしつこくない程度にとどめている。
生ビール(スパドラ)四八〇円、ホッピー三八〇円(中一八〇円)と、都心ながら立飲みらしい価格設定である。焼酎各種が四〇〇円から一五〇円、日本酒は三五〇円から四五〇円。モツの刺身が、ハツ、レバたたき、タンと揃っている。串焼きは、一本一三〇円から。カシラが自慢らしく、特製味噌付き二本三〇〇円というのを注文すると、味噌を一文字に載せた串が出てきた。美味しいが、少々肉の大きさにバラツキがあり、焼け具合にムラがあるのではないか。ポテトサラダ(三〇〇円)は、これでもかという巨大な山盛り。小食の人なら、これだけで満腹しそうだ。
サラリーマンのグループ客が多く、女性は少ない。ただ一組、女性が一人混じったグループがいたが、隣に立っている四〇代男がときおりちょっかいを出し、女性の上着の裾をめくり上げたりしている。少し軽めのセクハラといったところだ。立飲みでは、いっしょに飲んでいる者どうしが至近距離になる。半歩進んで、密着することもできる。だから、セクハラをしやすい。セクハラにあった女性は、もう立飲みはごめんだと思うだろう。だから、セクハラオヤジは立飲み屋の大敵である。(2009.10.13)

新宿区西新宿1-14-17
16:00〜24:00 日・連休の日月休