橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

『おとなの週末』11月号

雑誌に料理の写真を載せる場合、原則は原寸大で、必要に応じて料理の魅力が伝わる範囲で縮小する、というのが基本だろう。かつて文藝春秋から、原寸大を売り物にしたラーメン本や寿司の本が出ていたことがあるが、それぞれの店の看板メニューの魅力をよく伝えていた。
この点で、この雑誌はやや問題ありである。まずは、表紙に掲げられた寿司の写真。上から下に向かうにつれてだんだん大きくなり、真ん中のマグロまではいいとしても、はまぐりはエイリアンみたいだし、イクラは原寸の約二倍でグロテスク。中の記事を見ても縮尺はばらばらで、臨場感がない。
などと貶すために、この号を取り上げたのではない。注目記事は、「鳩山首相夫妻が通う旨い店・安い店」である。八月三一日から一ヶ月間の外食の記録をもとに、その足跡をたどっていくという趣向。自由が丘の寿司屋から始まって、中華、和食、焼鳥、モスバーガー(笑)、パン屋、韓国料理、ちゃんこ屋などと続き、前日紹介した恵比寿の「縄のれん」「さいき」で終わる。混んでいるに決まっているし、とくに行きたいとは思わないが、夫妻の人となりを知ることはできる。成金趣味ではなく、地に足のついたほどほどグルメと言ったところか。六ページだけだから、立ち読みで十分。

おとなの週末 2009年 11月号 [雑誌]

おとなの週末 2009年 11月号 [雑誌]