橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「テング酒場」銀座店

classingkenji2009-10-29

小雨の降る並木通りを新橋方向に歩きながら、二軒目をどこにするか考える。すると、向こうに見慣れない看板が。自動車道路の下の雑居ビル・銀座ナインの地下には、フロアを細長くとった「天狗」銀座ナイン店があるのだが、その半分くらいを新業態の「テング酒場」に変更したらしい。
チェーン居酒屋のさきがけであり、セントラルキッチン方式やメニュー構成など、チェーン居酒屋のビジネスモデルを完成させた「天狗」(経営はテンアライド株式会社)だが、最近は経営不振。デフレ時代に対応して、拡大中の業態である。串焼きは豚モツ、鶏が八四円、刺身各種が三九九円、ホッピーセット三九九円、生ビール四一〇円という大衆価格。味は、そこそこ。
経営不振で株価も低迷し、現在は三二〇円程度。一〇〇〇株、つまり三二万円分買うと、毎年二万円分の飲食券が送られてくる。利率でいうと、六・二五%。「天狗」が好きな人は、買って損はない。銀座ナインとは「銀座九丁目」という意味だが、実はここは道路の下なので地番がない。店の住所が「銀座8-5先」とあるのは、そのためである。(2009.10.17)

中央区銀座8-5先 銀座ナイン1号館B1
月〜金17:00〜23:30 土日祝17:00〜23:00