橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

四万十市「たにぐち」

classingkenji2011-01-06

調査のため、高知へ。一日目は、高知竜馬空港(何というネーミングだ)から四万十市へ直行し、車で数カ所回ってから、中心街の中村で夕食。入ったのは、郷土料理で知られるこの店である。
まずはビール(キリンとアサヒがある)でのどを潤し、後は地元の司牡丹。いただいた料理は、アオサの天ぷら、鰹の塩たたき、ゴリの唐揚げ、川えびの唐揚げ、そして天然ウナギと、土佐・四万十の珍味づくし。アオサは香り高く、川えびは香ばしさの中に滋味があり、天然ウナギは鰻の旨さだけの澄んだ味。これで二人で一万円に満たないという安さに驚く。地元とはいえ天然ウナギなどは貴重品で、店によってはかなり取られるのである。
創業は一九五二年という老舗で、カウンターで飲み食いする間も、ひっきりなしに地元客がやってくる。一二月は無休だそうだが、これは地元の宴会需要が多いからだろう。中村には郷土料理系の店がいくつかあるが、この店は最有力の一つである。(2010.12.20)

高知県四万十市中村大橋通4-50
11:30〜13:00 17:00〜21:00 日休(8月と12月は無休)