橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「きくや」

classingkenji2007-05-30

今日は仕事帰りに、すっかりお気に入りになったやきとり横丁の「きくや」へ。まず頼んだのはハイボール、そしてタレ焼き四本。上から順に、レバ、アブラ、シロ、オッパイ。レバとシロはどこのモツ焼き屋にもあるが、アブラとオッパイは比較的珍しい。アブラは、脂身そのものではなくゼラチン質の部分でねっとりした食感。オッパイはクセがなく軟らかい。いずれも、タレが合うと思う。今日は刺身の種類が多かった。関アジ(六五〇円)というのにも惹かれたが、生シラス(四五〇円)をいただくことにした。味は悪くなかったが、ポン酢の量はもう少し少なくてもいい。
思い出横丁はスーツにネクタイ姿のサラリーマンが多く、外から見ると真っ黒けということが少なくないが、やきとり横丁の方は比較的カジュアル姿の人が多い。五〇代の男性四人組は、ロン毛、カーキ色のベストなど、お洒落とはいえないものの個性的な出で立ちの面々。たばこもマールボロやキャメルを吸っている。大きなピッチャーからハイボールを注いで飲んでいる。ハイボールのピッチャーというのは初めて見た。あとは、四〇代のスーツにネクタイ姿男性二人組、スーツにネクタイ姿の三〇代男性、少し出来上がって入ってきたネクタイ姿とノーネクタイの五〇代男性二人組、四〇代でカジュアル姿の男性二人と女性一人のグループ。一階には大きなテーブルが二つあり、相席で囲んで座る。前の席の人と会話が始まることもある。味も雰囲気も私好み。ただ、混み出すと注文が通りにくくなるのが難点か。(2007.5.29)