橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「鳥じゅん」

classingkenji2009-04-17

大学の授業が終わったあと、DVDのケースを買いに、新宿西口のビックカメラへ。ビックカメラの裏手あたりには、古い居酒屋がいくつかある。有名なのは「ぼるが」だろうけれど、いつも満員なので入ったことがない。今日入ったのは、ビックカメラのすぐ裏の、この店。角地にあり、そのちょうど角のところに焼き場があって、親父が炭火で串を焼いている。店内は、けっこう広い。入って右手に、カウンター八席。左側にテーブルが並んでいて、四人掛けが一二卓ほどあるだろうか。
ともかく、安い。ビールは中生が五〇〇円、ヱビスの中瓶が五〇〇円というのがうれしい。酎ハイは三〇〇円で、炭酸で割ってレモンスライスを浮かべただけだが、ガス圧が適度に強くて美味しい。日本酒は二合の大徳利で七〇〇円。焼き鳥ともつ焼きは一本一二〇円で、五種類取り合わせた一皿が六〇〇円。炭火焼らしい香りと歯ごたえで、コストパフォーマンスは高い。もつ煮込みは鶏を使ったもので、野菜がたっぷり入り、三〇〇円。トマト、奴、板わさが二五〇円、めざし、えいひれ、川えび唐揚げが三〇〇円など、何でも安く、イカの丸焼き五〇〇円が最高。新宿の中心部では、奇跡的な安さといっていい。手書きのメニューも、下町大衆酒場のような味わいだ。
店内は大部分がスーツにネクタイ姿のサラリーマンで、カジュアル姿が二割くらい。女性は、サラリーマン集団の紅一点のようなワーキングウーマンがちらほらと、少人数のOLのグループが二組。きれいな店とはいえないが、自然に古くなった雰囲気は悪くない。グループ中心の店だが、カウンターに座れば一人でも居心地はよい。(2009.4.10)

新宿区西新宿1丁目4-6
16:30〜2:00 日祝休