橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

新宿

「第二宝来家」

今日は、新宿やきとり横丁で、『闇市の帝王』(草思社)の著者である七尾和晃さんと待ち合わせ。店は「第二宝来家」である。七尾さんとは、実は初対面。読書日記にこの本の評を書いたところ、ご本人からていねいなお礼のメールをいただいて、それではお会いし…

新宿の闇市

ゴールデン街のところでも書いたが、敗戦直後、新宿には大規模な闇市が形成された。新宿東口には尾津組の「竜宮マート」、南口よりの方には「和田組マーケット」、西口は安田組の「民衆市場」。店の数は、許可を受けたものだけで約六五〇、実際には三〇〇〇…

「きくや」

西口やきとり横町の店。やきとり横町は、ヤミ市直系といった趣の思い出横町ほどの独特の情緒には欠けるが、安くて良心的な店が多い。この店も、その一つ。焼きトン、焼鳥ともに、一本一〇五円である。ビール大瓶が五〇〇円、大生六八〇円、中生四五〇円とい…

「清瀧・歌舞伎町店」

「清瀧」は埼玉の酒造メーカーの経営だが、池袋の三店舗など一〇店しかないという、比較的小さな居酒屋チェーン。そのためか、チェーン臭さが希薄である。料理も、見るからにセントラルキッチンで作られたというようなものは少ない。ホワイトボードに今日の…

「番番」「TOKIO古典酒場」

三月二五日の座談会の様子が掲載されたムックが出た。三栄書房の「TOKIO古典酒場」である。「鈴傳」「みますや」「魚三」「大はし」などといった定番を押さえたうえで、「神谷酒場」「遠太」「万世橋酒場」「秋田屋」といった大衆酒場や焼鳥屋、それに…

歌舞伎町「三日月」

歌舞伎町の風林会館そばには、ゴールデン街ほど規模は大きくないものの、ヤミ市的な臭いのする路地がある。その中にある、知る人ぞ知る隠れ家のような店がここ。以前、マスコミ関係者に連れられてきたことがあり、いい店だという記憶があったので、再訪。た…

ゴールデン街

敗戦のわずか五日後の一九四五年八月二〇日、関東尾津組親分の尾津喜之助は「光は新宿より」をキャッチフレーズに新宿マーケットを開いた。場所は新宿東口、三越と駅の間の大通り沿いである。これに先立って八月一八日には、商品を買い取る旨の広告が都内の…

「宝来家」

新宿やきとり横町の老舗。入ったのは、これが三回目くらいだと思う。この店の創業者、金子正巳さんに『やきとり屋行進曲──西新宿物語』という著書がある。九死に一生を得て中国から復員し、妻子を養うため新宿西口のヤミ市でやきとり屋を始めてから、一九八…

正月の思い出横町

思い出横町、別名しょんべん横町へ、買い物ついでに行ってきた。といっても、開いてる店は数えるほど。 この飲み屋街、嫌いではないが、あまり多くは行かない。雰囲気は好きなのだが、大衆的な見かけほどには安くないのが、第一の理由。ビール大瓶は六〇〇円…

「のだぴん」

今日は二年前のゼミ生の忘年会で、新宿へ。といっても、集まったのは男三人だけ。なんという組織力のなさだ(笑)。一軒目は「美食酒家ちゃんと」というチェーン店で、これは完全にハズレ。料理は、創作料理のつもりらしいがありきたりの味で美味しくないし、…