新宿の闇市
ゴールデン街のところでも書いたが、敗戦直後、新宿には大規模な闇市が形成された。新宿東口には尾津組の「竜宮マート」、南口よりの方には「和田組マーケット」、西口は安田組の「民衆市場」。店の数は、許可を受けたものだけで約六五〇、実際には三〇〇〇以上に上ったとの説もある。
両国の江戸東京博物館には、東口の和田マーケットの飲食店街を復元した模型が展示されている。飲み屋が七軒、焼鳥屋、おでん屋、汁粉屋がそれぞれ一軒。聞き取り調査や写真などから、建物はもちろんのこと、人物も服装や髪型、仕草まで精巧に作られている。じっと眺めていると、闇市にタイムスリップした気分になってくる。模型の製作にあたっては徹底した調査が行われており、その調査の概要は、博物館の売店でも売られている報告書『ヤミ市模型の調査と展示』で知ることができる。調査団長は松平誠。松平は池袋のヤミ市についても同じような調査を行っており、その成果は豊島区郷土資料館のヤミ市模型として展示されているほか、『ヤミ市 東京池袋』(ドメス出版)にまとめられている。