橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「きくや」

classingkenji2007-04-27

西口やきとり横町の店。やきとり横町は、ヤミ市直系といった趣の思い出横町ほどの独特の情緒には欠けるが、安くて良心的な店が多い。この店も、その一つ。焼きトン、焼鳥ともに、一本一〇五円である。ビール大瓶が五〇〇円、大生六八〇円、中生四五〇円というのも安い。焼きトンには、てっぽう、あぶら、おっぱいなど、ちょっと珍しいものも揃う。もつ煮込み、牛すじ煮込みとも四〇〇円、刺身はカワハギ、イサキなど六種類で、五五〇円から六五〇円。日本酒は三種類しかないが、焼酎は四〇種類ほど揃い、甲類の二六二円から、泡盛の二三年古酒二五〇〇円などというものまである。ここで何より飲みたいのは、ハイボール三一五円。天羽の梅を使ったものに近いが、何かブレンドされているようで、柑橘系の香りがすこし強い。これは、うまい。
カジュアル系の三〇代男性三人組は、演劇関係者らしい。あとはいずれもスーツにネクタイ姿のサラリーマンで、四〇代と五〇代の二人組、五〇代二人、四〇代一人。焼きトン、焼き鳥、刺身が揃い、ビールとハイボールが安いとなれば、また行きたくなる。お勧めの店である。写真は撮り忘れたので、新宿西口商店街のホームページから拝借した。(2007.4.26)