橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「第二宝来家」

classingkenji2007-05-12

今日は、新宿やきとり横丁で、『闇市の帝王』(草思社)の著者である七尾和晃さんと待ち合わせ。店は「第二宝来家」である。七尾さんとは、実は初対面。読書日記にこの本の評を書いたところ、ご本人からていねいなお礼のメールをいただいて、それではお会いしましょうかとなった次第。一九七四年生まれという七尾さんとは、一五才も年が離れているが、ヤミ市に関心を持つ者どうしということで、いろいろ話が弾む。執筆の裏話や、都内のあちこちのヤミ市のことなど、時の経つのも忘れて話し込んだ。この本の主人公ともいうべき王長徳は、まだ存命中。店子にはまだ生存者も少なくないはずだが、管理する側としては最後の生き証人ということになろうか。七尾さんとも意見が一致したが、新宿と池袋については松平誠の学術調査があり、上野アメ横については当事者側からの記録がまとめられている(塩満一『アメ横三五年の激史』など)のに対して、もう一つの巨大ヤミ市である新橋については、まとまった記録がない。ジャーナリスティクな聞き取りは七尾さんにお任せするとして、今度は学術的な聞き取り調査をしたいところだが、ちょっと時間の余裕がないのが残念。誰か、やってみませんか。(2007.5.11)