橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

消えた下北ガード下

classingkenji2007-05-13

久しぶりに、下北沢へ。まず北口市場へ行って、ガード下のおでん屋「せっちゃん」のその後を確認しに行くと、写真の通り、すでに取り壊されていた。淋しい気持ちを抑え、すぐ近くの同じような雰囲気の店へ。作りも広さも、よく似ている。聞いてみると、この店も戦後間もなくでき、今のご主人は一九七七年に引き継いだとのこと。計画されている再開発が実施になれば、この店も、いや貴重なヤミ市遺跡であるこの市場全体が消滅することになる。先日の区長選挙では、再開発推進の現職が当選、再開発反対派は分裂選挙で敗退した。しかし区議会議員選挙では再開発推進の自民党が十一名落選と惨敗したので、議会の勢力地図は大きく変わっている。下北沢からは、しばらく目が離せない。ちなみに入った店は、料理はその日の日替わりと乾き物、漬け物のみ。いくら飲んでも食べても、またカラオケで歌っても二〇〇〇円という、不思議な店だった。(2007.5.12)