橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「第二宝来家」

classingkenji2008-09-30

思い出横丁(旧・やきとり横丁)では、「きくや」と並んで来ることの多い店。拙著『居酒屋ほろ酔い考現学』でも、創業者の金子正巳さんのエピソードを含めて紹介させていただいた。「トロ函」の次の二軒目に入ったときは珍しく空席が多く、客を取られたのかとちょっと心配したが、すぐ続々と客が入ってきて、ほぼ満席になった。
この店のやきとりは、たれがおすすめ。すり鉢で南京豆を摺ってペースト状にし、ザラメ醤油を加えたものを、少しずつ補充してつくるというタレは、数十年の肉汁の蓄積で何ともいえない味を出している。メニューには、「舌 豚の舌である。モツの最高級品」「ハツ 心臓である。そのものズバリ強心剤」「子袋 ふるさとの味」など、やきとりに使うそれぞれの部位の説明があるが、これは創業者によるコピーである。この横丁の老舗として、新参者と共存共栄、末永くうまいやきとりを食べさせてほしいものである。ちなみに脾臓の部分だけは「ちれ 五臓六腑の脾臓である。塩でますます美味」とのこと。(2008.9.20)

新宿区西新宿1-2-5
16:30-24:00 日・連休の祝日休