橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「トラノコ」

classingkenji2009-12-14

寒い屋外で飲んでいたので、地下街に入るとほっとする。入ったのは、靖国通りの地下にある新宿サブナード。めったに来ない場所だ。ここを通り抜けて東口方面でどこか店を探そうと思っていたのだが、何とこの地下街に直結したビルの地下に、場違いな雰囲気をたたえた大衆酒場がある。「お昼の12時より メニューが何と500種」という看板の向こうに、ホッピーの提灯がいくつも下がっている。場末の駅前あたりにありそうな玄関だ。店内はかなり広く、カウンター六席、テーブルは四人掛け一〇卓、二人掛け六卓など。
たしかに、メニューの種類が多い。小さな字でびっしり書かれていて、焼鳥・焼とんからカレー、洋食、漬け物、焼物、中華、韓国、チーズ料理、冷奴アラカルト、魚介料理、などと続き、ないものはないといっていい。昔のデパートの食堂と、タイプの異なる居酒屋数軒分を集めたような様相。酒もかなり種類が多く、日本酒と焼酎が一五種ずつ、ウイスキー、カクテル、ホッピー、サワー類など。日本酒がやや高めだが、他は概して安い。キリンラガー中瓶五〇〇円、サワー類四〇〇円前後、ホッピーはセットで四〇〇円など。料理の味は、ごく普通のレベルだが、量が多い。いも天ぷら五〇円というのを注文すると、ぶ厚いのが四枚も出てきて、これだけでお腹が一杯になる。
客層は、さまざま。スーツにネクタイ姿のサラリーマン二−三人のグループもいれば、中年夫婦、ラフな服装の若者のグループ、ビジュアル系の若者二人組、親子連れかと思われる六〇代と三〇代の男性二人組など。
店を出ると、地下広場の催事場にあったDVD売場を店じまいするところだった。地下道直結で、昼からやってるのだから、いろいろ使い道がありそうだ。(2009.12.4)

新宿区歌舞伎町1-17-13 新宿ピックペックビルB2
12:00〜24:00 無休