橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「木戸扇」

classingkenji2009-07-06

池袋のビックカメラ本店裏手あたりは、狭い飲食店と風俗店が混在していて、この街のヤミ市的な臭いがとくに濃厚な場所である。この店は、そこから明治通りへ出る少し手前あたり、有名ラーメン屋「えるびす」東口店の地下にある。以前はそんなに目立つ店ではなかったような気がするが、今日行ってみると「ホッピー」のちょうちんが所狭しと並んでいて、すぐにわかった。入り口の近くにカウンターが六席ほど、奥にはテーブル席がある。店内は、満席に近い。サラリーマンのグループや、OL二人連れ、カップルなど、客層は多様。この猥雑な界隈でいろいろな客を集めているのは、いい店の証拠である。
まずはホッピーを注文。日本酒の一合瓶に入った焼酎とホッピーのボトルが、それぞれ二三〇円。二杯分で四六〇円だから、割安といっていい。酒は日本酒が充実していて、一合瓶がいろいろ揃っているのが珍しい。銀盤、白瀧、白露、幻の瀧、朱鷺の里、秩父錦、飛良泉など、いずれも六八〇円である。サワー類は三八〇円。ビールはスーパードライで、生四五〇円、中瓶五〇〇円。
店の外観に似合わず、いい刺身を出す。三点盛りというのがあり、一人だと少量ずつの盛り合わせを作ってくれる。本日の三点盛りは、明石タコ、きびなご、イナダ。イナダは釣りの天然物だ。その他、普通の居酒屋料理はひととおり揃っている。とびきりの名店ではないけれど、池袋で安く飲みたいが、質は落としたくないというとき、安心して入れる店である。(2009.7.2)

豊島区東池袋1丁目39-6 えるびす地下
16:00〜23:50 日祭休