橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「道産子」

classingkenji2007-06-02

新宿西口商店街のパレットビル側、やきとり横丁と思い出横町の入り口に挟まれたところの地下にある。このあたりでは珍しい海鮮料理専門店で、肉類のメニューは馬刺と鶏唐揚げだけ。ホッキ貝、生ウニ、ルイベ、ニシン、ホッケなど北海道の魚介類が中心である。今日の突き出しは冷や奴にもずくと山芋を添え、上に生ウニを載せたもの。なかなか気が利いている。料理は刺身盛り合わせを除けば四〇〇円から七〇〇円が多い。イカ塩辛などの珍味類は二〇〇円から。ルイベは天然物らしく、輸入の養殖サーモンのように脂がギトギトするようなことはなく、澄んだ味わい。自家製の蟹爪フライは、蟹そのものの自然な味を生かしている。焼フジツボは、ウニ・ホヤ・蟹を足して三で割ったような味で、臭みは全くなく、美味。酒はサッポロ黒ラベルで、中ジョッキ、中瓶とも四〇〇円と安い。ノサップ、シレトコ、シャコタンと名付けられたサワー類は三〇〇円。いい店なのだが、今日席を取ったカウンターは、座り心地があまりよろしくない。テーブル席に座れたら、もっと誉めたのだが。今日の客は、スーツにネクタイ姿のサラリーマン六人の宴会、中年夫婦二組、カジュアル姿の三〇代男女三人組、仕事帰りらしい四〇代カップル、五〇代男性の一人客が二人(スーツにネクタイ姿とカジュアル)など。メニューに載っているものには品切れが多く、載っていないものに美味しいものが多い。まずは店主に、お勧めを訊ねた方がいい。(2007.6.1)