橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

日本各地

福岡・中州 人形小路

二軒目は、若手の弁護士さん二人と大学の先生の四人で、中州の人形小路へ。ここは狭い通路に居酒屋やバーが密集した、典型的な路地裏飲食店街。その成り立ちについては分からないが、おそらくは戦後のヤミ市起源だろう。これまで、その佇まいに心をひかれな…

福岡・天神「芙蓉」

九州弁護士会連合会に講演を頼まれ、福岡へ。八〇分の講演のあと一時間近い質疑と、ややハードだったがなんとかこなし、弁護士さんたちに連れられて宴席へ。 会場がここ。地元では知られた店らしい。一階は居酒屋風なのだが、今日は人数が多いので二階の座敷…

勝沼「ぶどうの丘 展望レストラン」

ゼミの合宿で、勝沼へ。毎年使っている、「ぶどうの丘」である。甲州盆地全体を見回せる丘の上にあり、温泉露天風呂、バーベキュー施設、巨大なワインカーブなど、楽しみは多い。夕食は展望レストランで、三五〇〇円のコース料理。いつも、ワイン代は私が持…

千歳「王華」

稚内から礼文島に渡り、さらに利尻島に移動して、それぞれ車で一周してきた。礼文島ではウニを堪能し、利尻島では昆布をしこたま買い込んだが、いずれも旅館で夕食だった上、興味をそそられる居酒屋らしきものもみあたらないので、夜はおとなしく過ごす。利…

稚内「咲田」

この日は、稚内で一泊。市内を歩き回ってみたが、いかにも観光客向けの店か、あまり料理に期待出来なさそうな地元常連向けの店が多い。いくつか候補はあったが、いちばん心ひかれたのが、この店。ここに入ったのは、大正解だった。 まずは、サッポロクラシッ…

日本最北端で飲むサッポロクラシック

今日は、日本最北端の宗谷岬へ。思っていたより稚内から遠い。雨交じりの天気だったが、ときおりぴたりと止んでくれる。天気が悪いからサハリンは見えない。道北地域は、思いのほかスーパードライが進出しているが、ここの売店はクラシックだったのでほっと…

札幌「魚平」

夕食はどこにしようかと、狸小路を物色。西の端あたりまで来て見つけたのが、この店。このあたりは何度も歩いたことがあるはずだが、見た記憶がない。おそらく、最近できた店だろう。まず、店頭のメニューにそそられる。アワビの刺身とバター焼きが、それぞ…

札幌「札幌開拓使麦酒・賣捌所」

同じくサッポロファクトリーの中だが、こちらは売店を兼ねたテイスティングルーム。二〇〇ミリリットルくらいのグラスでサッポロクラシック、ヱビス、エーデルピルス、そして札幌開拓使麦酒などを、すべて二五〇円で試飲できる。こちらでテイスティングして…

札幌「ビヤケラー札幌開拓使」

五泊六日の予定で北海道へ。今回は仕事とはまったく関係がなく、純粋に休養のための旅行である。 まずは、札幌で一泊。札幌といえば、ほぼ毎回行くのがサッポロビール園だが、今回は趣向を変えてサッポロファクトリーへ。ここは、一八七七年に日本で最初の本…

横浜「揚州茶楼」

今日は、なぜか、横浜で「地球のハラペコを救え ウォーク・ザ・ワールド」なるイベントに参加。この種のものに関しては、経費をかけてイベントなんかやるより寄付した方がいいんじゃないの、と考えてしまう方なのだが、横浜市街を歩いて一周するなんて、なか…

新潟「カーブ・ドッチ」

今日の宿泊は、少し足を伸ばして新潟市の西の外れ、かつては巻町といった地域にあるワイナリー、「カーブ・ドッチ」に併設された温泉・宿泊施設「ヴィネスパ」へ。 このワイナリー、変わった名前だが、綴りはCAVE D'OCCI。落希一郎という人が創業社長である…

新潟「早福酒食品店」

二泊三日の予定で、新潟へ。新潟市内の酒店では、東京ではプレミアつきの高値で売られているような地酒が普通に手に入ることが多いが、この店はとくに品揃えがいい。種類を多く揃えて圧倒するというのではなく、厳選されている。写真のように、店先にはこの…

鹿児島県歴史資料センター 黎明館

鹿児島市内の文教地区にある、歴史系の博物館・黎明館はなかなか充実しているが、とくに目をひかれたのが、このジオラマ。鹿児島最大の繁華街・天文館の昭和初期の姿を再現したものだが、ともかく巨大。いちばん手前の人物の身長は五〇センチほどもあり、奥…

鹿児島・天文館「豊年満作」

天文館付近の飲食店街を歩いていると、「ホッピー」の提灯が目に入ってきた。鹿児島にも、ホッピーは進出していたのである。店の名前は「豊年満作」。提灯を櫓に並べた、祭をイメージしたような外装。中に入ってみると、酒のケースとベニヤ板を組み合わせた…

鹿児島・天文館「黒福多」

二泊の予定で、鹿児島へ。鹿児島といえば、黒豚。豚といえば、もつ焼き、もつ煮込み。天文館周辺を歩き回ったのだが、黒豚のもつ焼きを看板に掲げる店が、なかなか見あたらない。目についたのは、鉄板を使うホルモン焼の店と、一本三八〇円からという高級店…

岡山「立ち呑み ハッピー酒場」

「佐久良家」をからホテルに帰る途中でみつけたのが、この店。これは、東京でも展開しているハッピー酒場ではないか。ホッピーの提灯までぶら下がっている。これは、入らないわけにはいかない。ホッピーを注文すると、「氷入れますか?」と聞かれる。これも…

岡山「佐久良家」

日本福祉大学の仕事で、岡山へ。先方の教員と事務方、お二人と待ち合わせて街に出る。ある人にいわせると、岡山にはいい居酒屋が少ない。瀬戸内の海の幸を美味しく食べさせる店はあるのだが、居酒屋好きが考えるところの「いい居酒屋」は少ないという意味で…

野田「まつ葉」

今日は講演を頼まれて、野田市へ行く。北千住から東武線を乗り継ぎ、自宅を出て2時間後に就いた駅で先方と落ち合い、車で会場の高等学校へ。教員相手の人権問題講座で、近隣の小中学校の先生を含め、二〇人ほどを相手にお話をする。内容は、いつもの格差社会…

横須賀「坂戸屋」

今日は、三浦半島地区の労組や市民団体が主催する、日の丸・君が代問題に関する集会で講演を頼まれ、横須賀へ。「格差社会と若者たちの未来」というテーマで九〇分ほど話をした。いつもは教育の話といえば、教育機会の不平等のことくらいしか触れないのだが…

札幌「炭おやじ」

懇親会の後は、ホテルに向かって狸小路を歩く。気温は零下五度だが、雪はやみ風もないので、さほど寒くは感じない。ホテル近くまで来たところで、いかにも大衆的なたたずまいのやきとり屋を発見。今日のひとり二次会は、ここに決定だ。入ってまず、サッポロ…

札幌「開」

今日のシンポジウムは、夕方の六時から。その間は、ホテルで締め切りの過ぎた原稿の仕上げをする。来る前に仕上げて、今日は観光する目論見だったのだが、仕方がない。そんな私を慰めてくれるかのように、外は大吹雪。みるみるうちに雪が積もっていく。大雪…

札幌「東京ビーム」

札幌にホッピーはあるのか。東京在住の大衆酒場好きとしては、これは避けて通れないテーマである。『古典酒場』で「ホッピーの北限」の一つとして青森の居酒屋が取り上げられていたところをみると、見込みは明るくなさそうだが、実際のところはどうか。ホテ…

札幌「春花秋灯」

夕食は、ここと決めていた。ススキノの交差点近くにある有名店である。もう二〇年近く前だが、初めて北海道へ来た時、刺身とウニのうまさ、そしてリーズナブルな値段に感動して以来、札幌を訪れた時は、たいがいここに寄ることにしていた。しかし、変わった…

札幌「サッポロビール園」

シンポジウムに参加のため、二泊の予定で札幌へ。一泊でもいいスケジュールだったが、冬の札幌は初めてなので、一日余裕をみて出かけることにした。まず向かったのは、当然のようにサッポロビール園である。サッポロビール園はもともと工場併設の施設だった…

長野「圭屋」

これも、長野駅近くの店。洋風の玄関の上部には「KEIYA」と金文字で店名が掲げられ、右側には「圭屋」と朱塗りの小さな看板。おしゃれな外観だが、左側は半ばオープンエアで中がよく見えるので、気軽に入れる。酒の品揃えがいい。「九平次」「十四代」「黒龍…

長野「とくべえ」

長野の夜、二軒目に入ったのはやはり駅の近くの「とくべえ」である。目立たない店構えに、縄のれん。余所者を寄せ付けないような雰囲気を少しばかり感じさせるが、磨りガラスから漏れてくる光に惹きつけられ、思い切って戸を開けてみる。その瞬間、この店は…

長野「もみじ茶屋」

今日は授業を終えた後、新幹線で長野へ。部落解放同盟の部落解放研究全国集会で講演を頼まれたからである。解放同盟関係で仕事を頼まれたのは、今回が初めて。長野は思ったより近く、大学を5時前に出て池袋から湘南新宿ライナーで大宮に出ての乗り換えたとろ…

勝沼「ぶどうの丘」

勝沼は、かつては勝沼町だったが、現在は甲州市の一部。ここは日本最大のぶどうの産地であり、ワインの産地である。甲府盆地の東端に位置し、南向き・西向きの斜面があって寒暖の差が大きいことから、良質のぶどうを産する。最寄り駅は中央線の「勝沼ぶどう…

福島「だいじょうぶ」

「古典酒場」編集長酔いどれブログで、「ホッピーの南限・北限を探る」という企画をやっていることについては、以前紹介した。実は、ホッピービバレッジのホームページでは「買える店・飲める店」の検索ができ、南は石垣島、北は稚内まで飲める店があること…

信州ビール事情

日本のビール市場は、基本的にキリン、アサヒ、サッポロ、サントリーという大手四社の寡占状態である。ビール類全体のシェアでは、キリンとアサヒが熾烈なトップ争いをしているが、発泡酒等を除くビールのみでみれば、完全にアサヒの圧勝で、そのシェアは五…