橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

福島「だいじょうぶ」

classingkenji2007-09-11

「古典酒場」編集長酔いどれブログで、「ホッピーの南限・北限を探る」という企画をやっていることについては、以前紹介した。実は、ホッピービバレッジのホームページでは「買える店・飲める店」の検索ができ、南は石垣島、北は稚内まで飲める店があることは分かっているのだが、「南限・北限」というのはそういう意味ではないだろう。私の理解では、「ホッピー酒場と呼ぶにふさわしい、三冷ホッピーをメインの飲み物のひとつとした大衆酒場の南限・北限」ということである。その意味では、これまで私の知るホッピーの北限は、郡山の「味の串天」だった。ところが今日は、郡山より北の福島市へ出張。これは、探さないわけにはいかない。仕事の後の会食では控えめにし、一緒だった福島大学の知人に飲食街をひととおり案内してもらい、その後は一人で探索開始。
程なく見つかったのが、この店。店の前には、猫が三匹。奥におぼろげながら「ホッピー」の文字。店名は「だいじょうぶ」という。入ってホッピーを注文すると、店主が冷蔵庫からジョッキを取り出しながら、「氷入れますか?入れる人と入れない人がいるんだけど」という。ちゃんとしたホッピーを出す店だということがわかる。もちろん理想は三冷なのだが、何しろこの暑さ。すぐぬるくなってしまうのは目に見えているので「一個だけ入れて」とお願いする。出てきたのは小売用の三三〇ボトルだが、すべてが冷えている。本日一杯目のホッピーは喉をすっきりと洗い流してくれる。メインの料理は串焼きで、焼鳥と焼きとんがある。タレ焼きのシロを頼んでみたが、いい味でホッピーに合う。後で知ったのだが、この店は全国やきとり連絡協議会の「やきとリンピック」にも出店したらしい。店主に話を聞くと、以前東京に住んでいて、ホッピーはその時に知ったとのこと。というわけで、個人的「ホッピーの北限」は、福島まで北上したのだった。(2007.9.4)