橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

札幌「ビヤケラー札幌開拓使」

classingkenji2009-08-27

五泊六日の予定で北海道へ。今回は仕事とはまったく関係がなく、純粋に休養のための旅行である。
まずは、札幌で一泊。札幌といえば、ほぼ毎回行くのがサッポロビール園だが、今回は趣向を変えてサッポロファクトリーへ。ここは、一八七七年に日本で最初の本格的なビール醸造所である開拓使麦酒醸造所がたてら建てられた場所で、その後サッポロビール札幌第一工場となっていたが、一九九三年に再開発されて複合商業施設となったもの。開業時の広告で、西原理恵子が「誰が行くんだ さいはてのこんなとこ」というマンガを書いていて笑ったのを覚えている。
飲食店はいくつかある。広大なアトリウムも一見の価値があるが、ビールを飲むなら「ビヤケラー札幌開拓使」へ行くべきだ。北海道で飲むべきビールは、何といってもサッポロクラシック(小ジョッキ六五〇円)。サッポロ黒ラベルのスムーズな喉ごし、フレッシュな香りと、ヱビスのコクを兼ね備えた傑作ビールで、レギュラー価格のビールとしては日本最高だろう。この店でしか飲めないのは、札幌開拓使ビール。これは明治時代のビールを再現したというもので、現代のビールに比べると、やや洗練された香りに欠けるが、苦みと麦芽の甘味が楽しめる。ビールの値段は、東京のライオンなどに比べるとやや安い。たとえば黒ラベルの小グラスは、東京の六三〇円に対して、ここでは五八〇円である。
料理はいろいろあるが、ジンギスカンが一人前から注文できるのがうれしい。普通の生ラムジンギスカンは、野菜付きで一三八〇円、北海道産の生ラムは一六八〇円。食べ比べると、北海道産は歯ごたえがあり、新鮮なせいか臭みが皆無。ビールには最高の相性である。
初めて行く人にはサッポロビール園の方がおすすめだが、二回目ならこちらもおすすめできる。(2009.8.20)

札幌市中央区北2条東4丁目
11:00〜22:00 無休