橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

新潟「カーブ・ドッチ」

classingkenji2009-06-08

今日の宿泊は、少し足を伸ばして新潟市の西の外れ、かつては巻町といった地域にあるワイナリー、「カーブ・ドッチ」に併設された温泉・宿泊施設「ヴィネスパ」へ。
このワイナリー、変わった名前だが、綴りはCAVE D'OCCI。落希一郎という人が創業社長であることからつけられたもの。落さんは鹿児島出身で、地元農業から始まった事業ではないが、周辺には新しいワイナリーもでき、観光客も増えて、この地域の核のひとつともいうべき産業に育ちつつあるようだ。八ヘクタールの自社畑を持ち、さらに近隣農家での契約栽培もある。この地域は砂地が多く、もともと果樹栽培は盛んだった。しかしスタッフによると、昔からブドウ栽培をしている農家に委託すると、従来からの食用ブドウの感覚で栽培するためにいい品質のものができないことがあり、経験のない農家に委託した方が成果が出やすいとのこと。
ワインは、量産されているスタンダード品が一八九〇円、シャルドネピノ・ノワールなど欧州タイプの品種を使ったものが三〇九八円など。フランスやイタリアの名産地と比較した場合、このワインに三〇〇〇円以上の価値があるかと問われると、少々辛いところがあるが、産地から移動させずに飲む味は格別。私はとくに、樽のバニラの香りがアクセントになったピノ・ノワールが気に入った。併設されたレストランでは、売店での販売価格とほぼ同じ値段で飲むことができ、グラスで三九〇円から。
温泉は、二キロほど離れた角田山から引いており、アルカリ泉で肌がぬるぬるする感覚。この温泉ができてから、近隣の人が訪れることが多くなった。地域の農業と共に歩むワイナリーとしての地位を、ますます確かなものにしたようだ。若い従業員も増え、雇用拡大にも一役買っている。
このワイナリー、猫が多い。スタッフによると、正確には分からないが四〇匹くらいいるのではないかとのこと。中には、ご覧の通り建物の中にまで入りこんでいるのもいる。ワイナリーの窓辺にたたずむ姿は、なかなか絵になる。(2009.5.31)

新潟市西蒲区角田浜1661
http://www.docci.com/