トビウオのなめろう
なめろうとは、ご存じの通り房総の郷土料理で、魚の身を叩いて味噌と生姜で味をつけ、さらに大葉、ネギ、ミョウガなどとまぜたもの。魚は青魚が基本だが、店によっては残り物をいろいろ加えることもあり、私がときどき行く店では、イカを加えて粘りけを出している。身の叩き方は、数ミリ角の賽の目程度に抑えることもあれば、原形をとどめないほど叩いて練り合わせることもある。素材もいろいろだが、私がいちばん好きなのはトビウオだ。
もともと身に粘りがあるので、それほど叩かなくてもねっとりした食感が出てくる。鰺や鰯の場合、素材や作り方によって水っぽくなるが、その心配はない。トビウオには青唐辛子が付き物なので、必ず加えること。ただし辛みが強いので、入れる量には気をつけなければならない。冷酒の肴としては、最高のもののひとつだろう。