橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

鹿児島・天文館「黒福多」

classingkenji2008-12-26

二泊の予定で、鹿児島へ。鹿児島といえば、黒豚。豚といえば、もつ焼き、もつ煮込み。天文館周辺を歩き回ったのだが、黒豚のもつ焼きを看板に掲げる店が、なかなか見あたらない。目についたのは、鉄板を使うホルモン焼の店と、一本三八〇円からという高級店。これでは、もつ焼き・もつ煮込み文化を確認したことにはならない。事前にもっと情報収集しておくべきだったと後悔しながら、何とかもつ煮込みだけは食べておきたいと、黒豚料理専門のこの店へ。東京・赤坂にも支店があるらしい。
お目当てのもつ煮込みは、八丁味噌のような濃褐色の味噌でよく煮込まれたもの(写真)。シロ、ガツ、タンなど数種類の部位が入っていて、たいへんおいしい。臭みも少なく、料理店らしく品のいい仕上がりである。
しかし、他の点ではいくつか首をかしげるところがあって、店そのものはあまり推薦しない。最初にもつ煮込みのほか、黒豚サラダと珍味三点盛りを注文したのだが、その黒豚サラダは、普通のサラダの上にゆですぎてパサパサになった黒豚を少量載せただけのもの。珍味三点盛は、茹でタン、「コラーゲン」と称する面皮の煮込み、耳の酢の物を、それぞれ小鉢に盛って並べたもの。面皮は、味はともかく下処理不足で黒い剛毛が多数残っていて食べにくい。しかも注文した直後には、つけ出しだとして、サラダと耳の酢の物が運ばれてきた。付け出しと重複する注文には、一言あっていいはず。しかも運んできた店員は、コラーゲンと耳を取り違えて説明した。焼酎をあらかじめ水で割ってボトルに入れた新商品があるというので、店員に何ミリリットルかと聞くと「三合です」という。三合瓶というものは存在しないので、五〇〇ミリリットルかと聞くと、自信なさそうに「はい、だいたい」という。案の定、運ばれてきたのは三〇〇ミリリットル瓶だった。ここまで店員教育のなっていない店も珍しい。
というわけで早々に退散したので、メイン料理のしゃぶしゃぶやとんかつの味はわからない。

鹿児島県鹿児島市千日町3-2 かまつきビル 1F
11:30〜13:50(土・日〜14:20)、17:30〜21:50(日〜20:50) 月休