橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

鹿児島県歴史資料センター 黎明館

classingkenji2008-12-28

鹿児島市内の文教地区にある、歴史系の博物館・黎明館はなかなか充実しているが、とくに目をひかれたのが、このジオラマ。鹿児島最大の繁華街・天文館の昭和初期の姿を再現したものだが、ともかく巨大。いちばん手前の人物の身長は五〇センチほどもあり、奥行きは一〇メートル近くあるものと思われる。近現代の盛り場のジオラマというと、江戸東京博物館豊島区立郷土資料館ヤミ市展示を思い出すが、スケールがまったく違う。しかも夕方から深夜までの情景を、照明と音声で再現するという、凝った演出もある。右側にあるのは映画館で、大河内傳次郎主演の「丹下左膳」を上映中。おそらく、一九二八年制作の映画である。この場所は現在、映画会社のビルになっている。左側には肉屋、そして食堂があるが、現在は料理店とそば屋。その前を、酔っぱらった七高生が歩いている。突き当たりの大通りを、ときおり路面電車が通り過ぎるが、これはいまも変わらない。こんなジオラマをみると、わくわくしてくる。その他、大正期のカフェの実物大に近いジオラマもある。鹿児島に行くことがあれば、ぜひお立ち寄りを。

鹿児島市城山町7-2
9:00〜17:00(入館は16:30まで) 月休