橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

札幌「魚平」

classingkenji2009-08-31

夕食はどこにしようかと、狸小路を物色。西の端あたりまで来て見つけたのが、この店。このあたりは何度も歩いたことがあるはずだが、見た記憶がない。おそらく、最近できた店だろう。まず、店頭のメニューにそそられる。アワビの刺身とバター焼きが、それぞれ六〇〇円。クラシック生ビール一時間飲み放題が八八〇円。これは、入らないわけに行かない。
店内のレイアウトがユニークだ。コの字型を二つ、L字型に組み合わせたようなカウンターが中央にあり、ここに二〇人以上座れそうだ。その横に小さなテーブルが三卓あり、さらに壁際にも一〇人分くらいのカウンター席がある。お通しのシステムもユニークで、カウンター横のテーブルに、茹でた甘海老、茄子煮、マカロニサラダ、アラ汁などの料理が数種類あり、ここから自由に器に盛って三〇〇円。クラシック生は、一杯四六〇円の品なので、二杯飲めばもとが取れる。わたしは四杯飲んだ。
六〇〇円のアワビは、小ぶりだが正真正銘の一個丸ごと。刺身とバター焼き、両方いただいたが、十分美味しい。つぶ貝五〇〇円、ホッキ貝四〇〇円、まぐろ六〇〇円、ニシン四〇〇円など、刺身が中心のメニューである。日本酒は一杯一八〇円から。どういうわけかデンキブランがあり、しかもオールドまでおいている。壁にはデンキブランの由来を書いた貼り紙もあり、主人はどうやら神谷バーに縁があるようだ。
次から次へと客が来て、六時半頃には満席に近くなる。仕事帰りの一人客が多いのが特徴のようで、中年男性も多いが、ここで夕食を取るのが習慣になっているような雰囲気の中年キャリアウーマンもいる。八八〇円の飲み放題に、料理を一品、そして一〇〇〇円の海鮮丼をいただけば、二五〇〇円ほどで豪華ディナーとなる勘定だ。
札幌は魚介類を食べさせる名店が多いが、ここに新たな一店が加わったといっていいだろう。近くに勤める人がうらやましい。(2009.8.20)

札幌市中央区狸小路6丁目 西端
16:00〜22:30