橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

長野「圭屋」

classingkenji2007-11-20

これも、長野駅近くの店。洋風の玄関の上部には「KEIYA」と金文字で店名が掲げられ、右側には「圭屋」と朱塗りの小さな看板。おしゃれな外観だが、左側は半ばオープンエアで中がよく見えるので、気軽に入れる。酒の品揃えがいい。「九平次」「十四代」「黒龍」など評価の高い酒と、長野の地酒や蕎麦焼酎などが揃う。料理は、鹿ロース炭火焼・バルサミコソースや、砂肝スモークのような洋風あり、真鯛の昆布じめ、バイ貝の含め煮など和風あり、そして鯛の酒盗やへしこなどの珍味あり。鹿肉の炭火焼は、きれいなミディアムレアに焼き上がり、バルサミコソースに青菜が添えられた一皿。邪道かもしれないが合わせてみた佐久の蕎麦焼酎は、香り高い一品だった。酒を除けば、地元産のものはあまり見あたらない。郷土料理を求めていく場所ではないが、ニューウェーブ系の居酒屋として見れば、かなりレベルが高い。こんな店が職場の近くにあったら、たびたび訪れるに違いない。