橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

長野「もみじ茶屋」

classingkenji2007-11-16

今日は授業を終えた後、新幹線で長野へ。部落解放同盟の部落解放研究全国集会で講演を頼まれたからである。解放同盟関係で仕事を頼まれたのは、今回が初めて。長野は思ったより近く、大学を5時前に出て池袋から湘南新宿ライナーで大宮に出ての乗り換えたとろ、7時過ぎには着いてしまった。ホテルに荷物を置き、いそいそと居酒屋探索へ。とはいっても、長野市に泊まるのは今回が初めて。土地勘がないので、駅周辺だけに禁欲しておくことにする。幸い、駅周辺だけでも心惹かれる店がいくつか見つかった。
まず入ったのは、この店。店構えからして、一見の観光客が入りやすい感じである。手前にL字型カウンターがあり、十席ほど。奥には座敷もあるようで、グループ客が出入りしていてる。メニューを見ると、長野名物と普通の居酒屋メニューが並ぶ、典型的な郷土料理系居酒屋である。まずはたにしの酢味噌(四五〇円)と馬刺し(四五〇円)、それに日本酒(一・五合・六〇〇円)を注文。たにしは私の好物で、以前はよく銀座の「山形の酒蔵」で食べていたのだが、閉店した後はご無沙汰だった。薄めの味付けで、大変美味しい。馬刺しは、サシの入らないきれいな赤身で、これも美味しい。いずれも、日本酒に良く合う。次に頼んだのは、店に入った時から食べようと決めていた天然きのこ鍋(一二〇〇円)。天然のきのこは、子どものころは田舎でよく食べたものだが、今まではすっかり貴重品だ。数種類のきのこと野菜に半ば火が通った状態で出てきた鍋を、カウンターの上でさらに温めて食べる。きのこは数種類入っていて、何ともいえない食感で香りがいい。酒はほかに地酒の冷酒が三種類ある。ビールとキリンとアサヒがあり、ほかに焼酎が三種類とサワー類など。蕎麦もあり、締めに蕎麦を食べてから出て行く客が多かった。気軽に入れて、ちゃんとした郷土料理が食べられる、いい店だと思う。(2007.11.6)