橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

札幌「春花秋灯」

classingkenji2008-01-25

夕食は、ここと決めていた。ススキノの交差点近くにある有名店である。もう二〇年近く前だが、初めて北海道へ来た時、刺身とウニのうまさ、そしてリーズナブルな値段に感動して以来、札幌を訪れた時は、たいがいここに寄ることにしていた。しかし、変わったものだ。まず、ビールがサッポロではなくサントリーになっている。刺身の盛り合わせは三種盛、五種盛、七種盛と三段階に分かれ、値段も高くなった。以前は、盛り合わせといえば一種類で、そこに一〇種類ほどが盛り込まれていたものだったが。ウニ料理がない。鮭のちゃんちゃん焼きは、家庭で作れるレベルの味。そういえば、以前は六時を過ぎると満員だったものだが、今日は八時になっても半分以上が空席である。パンフレットによると、同名の店が増えたほか(そういえば東京にも何店かある)、イタリアンなど別業態も展開しているようだ。これでは、味が落ちても仕方がないか。もっとも、美味い店の多い札幌の居酒屋として平均的なレベルは維持していると思うので、行ってみたい人はどうぞ。酒は種類が豊富で、北海道の日本酒、昆布やミルクを使った珍しい焼酎もある。(2008.1.20)