橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

札幌「開」

classingkenji2008-01-28

今日のシンポジウムは、夕方の六時から。その間は、ホテルで締め切りの過ぎた原稿の仕上げをする。来る前に仕上げて、今日は観光する目論見だったのだが、仕方がない。そんな私を慰めてくれるかのように、外は大吹雪。みるみるうちに雪が積もっていく。大雪といえば湿った牡丹雪という北陸に育った私としては、これほど盛大に粉雪が舞う光景を見るのは初めてかもしれない。昼過ぎには小降りになったので、ラーメン横丁まで歩いて有名店「おぢぢ」で味噌ラーメンを食べたが、そのほかはずっと仕事。五時二〇分頃にホテルを出て、会場へ。歩けばすくだろうと高をくくっていたら、意外に遠く、建物も大きく、会場に着いたのは一〇分前だった。
シンポジウムのパネリストは、マスコミによく登場するリベラル派政治学者で民主党のブレーンとしても知られる北海道大学山口二郎さん、同じく宮本太郎さん、北海道新聞の加藤雅規さん、そして私の四人。テーマは「日本人が望む社会経済システム」で、格差社会論争と参議院選挙以後、小泉流の「改革」を否定して分権型福祉社会を求める人々が民主党を支持する傾向が強まり、政治的な対抗軸が明確になってきたのではないかというのが山口さん・宮本さんの主張。コメンテイターの私は、基本的には賛同するが、女性(とくに労働者階級女性)は、環境・福祉重視など政治的志向性としては民主党と一致するにもかかわらず、積極的に政治に関わろうとせず自民党を支持する傾向があり、ここが対抗軸の形成のネックになっているのではないかというような話をした。
シンポジウムのあとは、懇親会。場所はかき料理が売り物の「開(ひらく)」である。いただいたのは、厚岸産など三種類の生牡蠣の盛り合わせ、刺身の盛り合わせ、鮭のハラス焼き、かき鍋など。飲み物は、千歳地ビールにシャブリ。安い店ではないようだが(ゲストの私は、ごちそうになった)、どれも美味しかった。山口二郎さんと宮本さんは一九五八年生まれで、私と同世代。来月には東京で、加藤紘一菅直人を迎えて同じテーマのシンポジウムを開くとのこと。同世代のリベラル派知識人の活躍は、心強い。(2008.1.21)