橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2009-01-01から1年間の記事一覧

吉田類『東京立ち飲み案内』

ご存じ、吉田類さんの最新立ち飲み案内である。全七十二軒を厳選。和風中心の伝統的スタイルと、これにモダンを加味した変形が大部分を占めるが、南欧風のバル、ビストロ、ワインバーなども。老舗もあれば、最近できた店もある。系列店や類似の店も含めれば…

勝沼「ぶどうの丘 展望レストラン」

ゼミの合宿で、勝沼へ。毎年使っている、「ぶどうの丘」である。甲州盆地全体を見回せる丘の上にあり、温泉露天風呂、バーベキュー施設、巨大なワインカーブなど、楽しみは多い。夕食は展望レストランで、三五〇〇円のコース料理。いつも、ワイン代は私が持…

端田晶「もっと美味しくビールが飲みたい!」

著者は、恵比寿ガーデンプレイスにある恵比寿麦酒記念館の元館長で、現在はサッポロビールCSR部長。ビールに関する豊富なうんちくの持ち主で、以前、『小心者の小ジョッキ』という著書を紹介したことがある。もともとは三井グループのグループ内広報誌である…

用賀「エビス参」

用賀にも、「エビス参」が登場。この八月にオープンしたばかりらしい。客は、少ない。六時を過ぎているのに、私が最初の客だ。ホッピーを注文すると、三冷なのはいいのだが、ジョッキの外側にまでびっしり霜がついている。おそらく、何日も前から冷凍庫に入…

用賀「とり八」

最近、運動不足である。自宅にはエアロバイクとローイングマシンがあって、空き時間にでも運動できるようになってはいるのだが、はっきりいって室内で自転車を漕いでいても、面白いものではない。ビデオを見るという手もあるが、字幕スーパー入りならともか…

「みますや」

日本酒居酒屋談議、リード役の藤原さん不在で、最初はスローペースだったが、アルコールが回るとともにどんどん話題が出て来る。座談会は9時前に終了。しかしこの面々が、一軒で終わるはずはない。タクシーを拾って、「みますや」へ向かう。 最近は、なかな…

浅草橋「西口焼きとん」

今日は「古典酒場」の座談会。会場は、二月と同じくこの店である。場所はテーブルと椅子のある「やきとん広場」のほう。こちらのスペース、以前は土曜は閉まっていたはずだが、いつの間にか営業するようになったらしい。座談会の顔ぶれだが、「酔わせて下町…

藤木TDC/イシワタフミアキ『昭和幻景』

文を担当している藤木は、『東京裏路地“懐”食紀行』などの著書があり、ヤミ市起源の飲食店街を精力的に取材していることで知られる異色のライターである。これまでの著書は、「食」に重きをおいていて、戦争直後の雰囲気をとどめる建物そのものには、あまり…

上板橋「いぶき」

上板橋駅北口を出て、バス通りを東武練馬方向へ少し行ったところの右側。目立たない店構えなので、見落としやすいかもしれない。中に入ると、右側にL字型カウンターがあり、奥には座敷。店内は、ゆったりスペースをとってあり居心地が良い。カウンター席も…

消えた「もつ九」

「もつ九」が消えた。この店については、去年、一昨年と、すでに取り上げている。私の30歳代から40歳代前半は、この店とともにあったといって過言ではない。ところが残念なことに火事で半焼し、ついに取り壊しとなった。 ご覧の通り、完全に更地である。何と…

志村三丁目「新潟」

今日は、ちょっと必要があって板橋へ。用事を済ませたあと、まずは志村三丁目から少し都心方向へ戻ったガード下にある、この店。「猟師(ハンター)の店」と称し、季節には店主が自分で撃ってきた猪や鴨を出す。酒は、主人の郷里である越後の酒。以前、このあ…

「大衆酒場 明星」

次に向かったのは、踏切を越えた反対側にあるこの店。あちこちに紹介されているから、名前だけは知っている人が多いと思うが、場所・雰囲気とも難易度が高い。好みの人には堪えられない、昭和二〇年代の雰囲気の大衆酒場である。私は三回目ほどだが、前の来…

板橋「まつや」

6時半に編集者と駅の改札で落ち合い、この店へ。JR板橋駅東口を出てすぐだが、実は住所は北区滝野川。板橋に住んでいた頃、このあたりではよく飲んだが、住んでいたのが西側の都営三田線沿線だったので、こちら側にはあまり来たことがない。戦後の雰囲気を残…

「かしら屋」

今日は出版社の編集者と飲む予定だったが、大学での雑用が思ったより早く終わり、1時間半ばかり空き時間ができてしまったので、赤羽で時間をつぶすことにする。ちょうど、衆議院選挙も大詰め。東京十二区が大変なことになっているらしいので、見物も兼ねてと…

『おとなの週末』9月号・B級グルメ特集

「B級グルメ」がブームになったのは、もう二〇年ほど前のことだが、この不況でブーム再燃ということだろうか。出版や雑誌の特集が相次いでいる。とくにこの『おとなの週末』という雑誌など、しつこいほど繰り返し特集を組んでいるが、今回は大衆酒場の比重…

千歳「王華」

稚内から礼文島に渡り、さらに利尻島に移動して、それぞれ車で一周してきた。礼文島ではウニを堪能し、利尻島では昆布をしこたま買い込んだが、いずれも旅館で夕食だった上、興味をそそられる居酒屋らしきものもみあたらないので、夜はおとなしく過ごす。利…

稚内「咲田」

この日は、稚内で一泊。市内を歩き回ってみたが、いかにも観光客向けの店か、あまり料理に期待出来なさそうな地元常連向けの店が多い。いくつか候補はあったが、いちばん心ひかれたのが、この店。ここに入ったのは、大正解だった。 まずは、サッポロクラシッ…

日本最北端で飲むサッポロクラシック

今日は、日本最北端の宗谷岬へ。思っていたより稚内から遠い。雨交じりの天気だったが、ときおりぴたりと止んでくれる。天気が悪いからサハリンは見えない。道北地域は、思いのほかスーパードライが進出しているが、ここの売店はクラシックだったのでほっと…

札幌「魚平」

夕食はどこにしようかと、狸小路を物色。西の端あたりまで来て見つけたのが、この店。このあたりは何度も歩いたことがあるはずだが、見た記憶がない。おそらく、最近できた店だろう。まず、店頭のメニューにそそられる。アワビの刺身とバター焼きが、それぞ…

札幌「札幌開拓使麦酒・賣捌所」

同じくサッポロファクトリーの中だが、こちらは売店を兼ねたテイスティングルーム。二〇〇ミリリットルくらいのグラスでサッポロクラシック、ヱビス、エーデルピルス、そして札幌開拓使麦酒などを、すべて二五〇円で試飲できる。こちらでテイスティングして…

札幌「ビヤケラー札幌開拓使」

五泊六日の予定で北海道へ。今回は仕事とはまったく関係がなく、純粋に休養のための旅行である。 まずは、札幌で一泊。札幌といえば、ほぼ毎回行くのがサッポロビール園だが、今回は趣向を変えてサッポロファクトリーへ。ここは、一八七七年に日本で最初の本…

上野「カドクラ」

そして、三軒目。「たきおか」の向かいに最近になって開店した立ち飲み屋の「カドクラ」である。こちらは店の外にまで客があふれ、熱気がある。とにかく、安い。生ビールが三五〇円、大瓶は四〇〇円(いずれもスーパードライ)、ホッピー三五〇円(中一五〇円、…

上野「たきおか」

二軒目はここ、立ち飲みの有名店「たきおか」である。ともかく安い。ビール大瓶、生とも三九〇円。サワー類は二九〇円。料理は一五〇円と二〇〇円が中心。メニューのレイアウトなど、どこか赤羽の「いこい」に似ている。男たちが群がり、活気にあふれている…

アメ横「豚坊」

今日は、研究会で東大へ。場所は、今まで入ったことのない工学部一号館。建築学科のある建物で、若手三人と「ヤミ市研究会」である。別に怪しい研究会ではない。戦後のヤミ市に今日の繁華街の起源を探ろうという、まじめな研究会である。 研究会のあとは、実…

中野「煮込み屋 ぐっつ」

生ホッピーを三杯飲んだところで「ぢどり屋」を出て、中野駅の方へ向かう。「第二力酒蔵」の前を通りかかったところで、向こうに見慣れない店がある。洋風の店のようだが、看板には「煮込み屋」の文字。これは、面白そうだ。 看板のもつ煮込みは、味噌味、塩…

中野「ぢどり屋 中野店」

この店は今年の六月に紹介した。「生ホッピー」の文字に引かれて入ったのが、この店。その日は生ホッピーの文字にひかれて入ったのだが、冷えてないジョッキを使っているらしい。店員が「生ホッピー、いかがですか」と聞くので、「ちょっとぬるいなぁ」と答…

武蔵小杉「文福 南口店」

さて三軒目は、もつ焼き・もつ煮込みの有名店へ。駅周辺に三店あるらしいが、私が行ったのはやや新しそうな南口店である。実は先にも立ち寄ったのだが、満員で入れなかった。店内はあまり広くない。右側にカウンターが九席ほど、左側にテーブルが四卓。カウ…

武蔵小杉「割烹こすぎ」

「くろちゃん」のカウンターに座り、ふと外を見ると、真向かいの店の様子が目に入ってきた。店先にはホッピーのポスターと、「レモンサワー 酎ハイ 100円」の文字。店内は明るく、外からでも中がよく見えるが、客のほぼ全員が、黒っぽいズボンをはき、白いシ…

武蔵小杉「くろちゃん」

武蔵小杉が人気、なのだそうである。工場跡地で大規模な再開発が行なわれており、交通の便はよく、しかもJR横須賀線の新駅も予定されている。広尾からは日比谷線経由で簡単に行けるし、帰りは南武線経由で簡単に行けるから単に帰れるから、集中講義二日目の…

さば缶スペシャル

最近、近所の店で始めた料理が、これ。さばの水煮缶を開けた上に、ネギとバターを載せ、醤油をかけ回して、火にかける。全体がぐつぐつ煮えて、バターが溶けてネギに火が通ったところで、皿に載せて出す。不思議にうまい。もつ煮込みに通ずる、下手味の旨さ…