橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2009-01-01から1年間の記事一覧

広尾「百川」

二軒目は、先に歩き回ったときに目をつけておいたこの店。広尾商店街から、南側の横道に入り、突き当たりを右に曲がった、公園に面した場所にある。看板には「季節料理」の文字。いかにも正統派の居酒屋だ。紺色の暖簾が美しい。 店内は、さほど広くはない。…

広尾「もくもく」

今日から聖心女子大学で集中講義。名門のお嬢様女子大だけに警備は厳しく、中に入るときは必ず守衛に呼び止められる。身分証携帯も必須だ。学生は、たいへんお行儀がいい。授業中の私語などは皆無だし、眠っているのも、まあ一−二名程度だ。 授業は六時前に…

豪徳寺「祭むら」

というわけで、口直しに行ったのが、この店。シロ、アブラ、カシラ、スジなど、やはりうまい。しかも、味に安定感がある。この店のホッピーは、ホッピーのボトル、焼酎、ジョッキがいずれも冷えていて、ジョッキに四分の一ほどだけ氷を入れてくる準・三冷ス…

「八剣伝」豪徳寺駅前店

大手居酒屋チェーン「マルシェグループ」の主力業態だが、つい数日前、豪徳寺の駅近くに開店した。開店から四日間はドリンク半額だというので、行ってみる。六時少し前だったが、五席しかないカウンター席はすでに中高年男性客で埋まっている。そこで、四人…

「豊田屋一号店」

豊田屋は池袋西口に三軒ある老舗だが、日曜日に営業しているのは、この一号店だけのようだ。カウンターだけの小さな店で、男が一人で切り盛りしている。昭和四〇年代の雰囲気の、男臭いもつ焼き屋だ。入ったのは五時半頃だったが、男性客が四人ほど。サッポ…

「帆立屋」

今日はオープンキャンパスで、朝の九時から四時近くまで高校生の相手をする。最近の私立大学では、このような仕事が多い。高校生もさまざまだ。こっちが話したことをすっと理解するのもいれば、一字一句確かめないとわからないのもいる。疲れたので、またま…

「三福」

この店には何度か来ているが、これまでもつ煮込みを食べたことがなかった。ご覧の通り、透き通った汁のなかで、豆腐とさまざまな部位のもつが揺らめいている。細く切られたネギも美しい。まったく臭みがなく、口中に滋味があふれる。これは素晴らしい。 この…

「ふくろ」

今日は、朝九時過ぎから期末試験。思ったより出席率が悪く、採点も順調に進んで、夕方にはすべて終了。これは一人で慰労会だな、と池袋へ。まだ五時前だ。となると、行くのはこの店だ。 一階のカウンター席は、もう三分の二ほどが埋まっている。全員が、中高…

高田馬場「みつぼ」

「みつぼ」は、江戸川橋と池袋にある豚モツ料理の名店で、池袋店は以前紹介したことがある。最近になって、三店目が高田馬場駅の戸山口を出てすぐの場所にオープンした。ご覧の通り、山手線のホームからよく見える。店内はけっこう広く、テーブルが十数卓あ…

秋刀魚の造り

秋刀魚が出始めている。この時期の秋刀魚は脂の乗り方が控えめで、塩焼きでは物足りないが、刺身にはうってつけである。薬味には生姜が最適だが、今回はちょっと一工夫してみた。まず、切り方は拍子木とする。身が柔らかい魚なので、薄く切ると歯ごたえがな…

「日本再生酒場」

前期の授業は今日で終わり。そこでどういうわけか、ゼミ生で酒好きの男子学生二人を連れて、池袋で飲むことに。まずはライオン池袋西口店で喉を潤したあと、立ち飲み屋へ。池袋の主だった店はたいがい行ってるのだが、駅から少し離れていることもあって、こ…

大阪・天満「銀座屋」

満足しつつも、ここは帰りの電車の予定などないときに、もう一度じっくり楽しみたいなと天満酒蔵を出る。まだ少しだけ時間がある。そこで、駅前のこの店へ。立ち飲み店だが、店先の看板に「ビンビール330 生ビール(中)300」などと書いてある。驚くべき安さだ…

大阪・天満「天満酒蔵」

天満は、環状線大阪駅の隣の駅。これまでも仕事で来たことがあったが、駅を出てすぐ右に曲がって、会議場へ行っただけ。反対側に、こんな大きな商店街があるとは知らなかった。 商店街は天神橋筋商店街といい、全長二・六キロメートル、店舗数六〇〇で、日本…

大阪・鶴橋「串まつ屋」

さて二軒目だが、金網や鉄板を使うホルモン焼の店では、多くの種類を食べられそうにない。そこで、あらかじめ目をつけておいたこの店へ。鶴橋駅近くのガード下にある、串焼き専門店である。明るい雰囲気で、初めてでも入りやすい。右側にカウンターが数席あ…

大阪・鶴橋「岩山海」

仕事が終わったのが五時過ぎ。ホテルに荷物を置き、鶴橋へ出かける。鶴橋は以前から気になっていた場所だが、行くのは今回が初めてだ。もちろん、目当てはホルモン焼なのだが、最初からホルモン店に入って、ホルモン店ばかり梯子するというわけにもいくまい…

大阪・謎のホッピー

一泊二日で大阪へ。仕事は一日目で終わり、その日の夜と翌日の昼間、何軒かを飲み歩く。ある居酒屋で、ビールを飲みながら店内を見回していると、「ホッピー二八〇円」という貼り紙が目に入ってきた。大阪でホッピーに出会ったのは初めてのことだ。二八〇円…

高田馬場」「鳥やす」

このブログでは、これまでおそらく四〇〇軒くらいを紹介してきたと思うが、まだまだ空白地帯がいくつもある。そのひとつが高田馬場で、今日は山手線で途中下車してみる。まず向かったのは、有名な焼鳥屋のこの店。駅からガードをくぐって山手線の外に出ると…

『古典酒場』VOL.7 新橋特集

最新号です。今回は、スケジュールが合わずに「居酒屋通ブログ○人衆」の座談会はお休みしましたが、そのかわりに「新橋ヒストリー」という小文を書いています。ご笑覧を。古典酒場 Vol.7 -呑兵衛パラダイス新橋-(SAN-EI MOOK)出版社/メーカー: 三栄書房発売…

「さばのゆ」

かつて経堂に、塩原湯という銭湯があった。堂々たる伝統建築の銭湯で、ときどき落語会やライブなどのイベントも行なわれ、コミュニティ・センターのような役割をも果たしていたのだが、老朽化のため惜しまれつつ取り壊された。 そのイベントを仕切っていた「…

新宿「ビアホール ライオン 新宿ライオン会館店」

銀座三越裏あたりにある新宿ライオン会館は、東京のライオンチェーンの中では、おそらく銀座七丁目店に次ぐ規模である。上階には和食やエスニック、ピザなどの店もあるが、一階と地下一階がオーソドックスなビアホール。今日、ポスターで知ったのだが、この…

ラズウェル細木『酒のほそ道』第24巻

これは毎回というわけではなく、ときどき買っている酒と肴のマンガ。居酒屋で旬のものを食べる、初詣やハロウィーンなどの年中行事、ワインオープナーや箸袋など酒に関する小物のお話など、ストーリーにはいくつかのパターンがあって、けっこうバリエーショ…

「男体山」

二軒目に入ったのは、ここ。この店、ずっと前から知ってはいたのだが、入ったのは今日が始めて。だって、風俗店が集まる界隈に「男体山」ですよ。「女体山」ほどではないが、気恥ずかしくて(笑)。少し酔いが回ったところで、空席がみえたので入ってみること…

「木戸扇」

池袋のビックカメラ本店裏手あたりは、狭い飲食店と風俗店が混在していて、この街のヤミ市的な臭いがとくに濃厚な場所である。この店は、そこから明治通りへ出る少し手前あたり、有名ラーメン屋「えるびす」東口店の地下にある。以前はそんなに目立つ店では…

日中友好の味 江古田「同心房」

前から考えていた。ホッピーは、モツ焼きやモツ煮込みに合う。そして中華料理にも、モツ料理はたくさんある。それでは、中華風のモツ料理を食べながらホッピーを飲める店はないものか。ところが、中華もやってる大衆食堂のような店以外では、ホッピーを見た…

東長崎「やきとり大将 どん」

西武池袋線で池袋から二駅目が東長崎。豊島区の最西端にあたるこのあたり、長崎、南長崎という地名はあるが、東長崎という地名はない。なぜこんな駅名になったかというと、九州の長崎と区別するためだとか。古い商店街がある。駅の近くにはバラック飲み屋街…

橋本健二の読書&音盤日記

この「居酒屋考現学」とは別に、もうひとつブログを持っています。これまでは楽天ブログだったのですが、あまりに広告が多いのに辟易して、Hatenaに移行させました。関心のある方は、お立ち寄りください。 橋本健二の読書&音盤日記

鈴木琢磨『今夜も赤ちょうちん』

毎日新聞の名物記者、鈴木琢磨の名コラム「今夜も赤ちょうちん」が、ついに単行本になった。版元は、なぜか毎日新聞社ではなく、あまり聞いたことのない出版社。毎日新聞夕刊での連載は約一五〇回だったが、精選して七八本、これに「呑んべえ列伝」と題して…

「思い出横丁」の風景

今日は、静岡大学時代の教え子と、「思い出横丁」で待ち合わせ。最近、小さなビジネスを立ち上げたらしく、協力してくれというのだが、ちょっと分野が違う。適当に、話を聞いておく。 変わった看板が増えた。「トロ函」の上を見ると、まず巨大なキンミヤ焼酎…

江古田「あぶさん」

この店については、二年前に書いたことがある。その後も何回か来ていたのだが、今日久しぶりに寄ってみると、「この店、進化したな」と思わせるものがあって、もう一度取り上げてみたくなった。 メニューが増えている。「血管」というのがあって、串は九〇円…

江古田「乃がた」

ここは、江古田でも老舗に属する居酒屋。何年かぶりで、来てみた。ご覧の通り、どこにでもありそうな店構えである。同名の店が西武新宿線の野方にあるが、関係はあるのかないのか。 中に入っても、ごく普通の居酒屋だ。カウンターが数席と、数卓のテーブル席…