橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「帆立屋」

classingkenji2009-07-30

今日はオープンキャンパスで、朝の九時から四時近くまで高校生の相手をする。最近の私立大学では、このような仕事が多い。高校生もさまざまだ。こっちが話したことをすっと理解するのもいれば、一字一句確かめないとわからないのもいる。疲れたので、またまだ日が高いが、池袋で飲むことにする。
まず向かったのは、この店。けっこう知られた二四時間営業の店だが、私は初めて。立呑亭と称するが、カウンターには丸椅子がある。生ビール三八〇円、酎ハイ・サワー類三一五円、焼酎各種三八〇円前後、日本酒は三一五円から。料理は三一五円が基本で、しらすおろし、塩辛、キムチ、ポテトサラダ、ねぎぬた、枝豆、串焼き三本、ししゃも、ハムカツ、鶏の唐揚げなどが、すべてこの値段。牛すじ煮込みは三五〇円だが、これをアレンジした牛すじトマト煮込みというのがあり、注文してみると透明ながらちょっと赤っぽい汁に牛すじが浮かんでいる。最初はそのまま、途中からレモンを搾って食べるとのことで、やってみるとなかなかよろしい。夏向きの煮込みである。
日曜日の夕方だ。散歩のついでに立ち寄った、あるいはこれを目当てに散歩に来た中高年、盛り上がっている年金生活者らしいグループ、買物帰りの夫婦などで、席の半分以上が埋まっている。目立たない場所だから、常連密度が高そう。ちょっと飲むにはいい店だが、ビールがスーパードライというのが難点。ロサ会館そばにある「八丈島」は系列のやはり二四時間店で、こちらは島寿司、あしたばなど八丈島料理がメニューに加わる。(2009.7.26)

豊島区西池袋1丁目34-5
24時間営業 無休