橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

大阪・天満「天満酒蔵」

classingkenji2009-07-21

天満は、環状線大阪駅の隣の駅。これまでも仕事で来たことがあったが、駅を出てすぐ右に曲がって、会議場へ行っただけ。反対側に、こんな大きな商店街があるとは知らなかった。
商店街は天神橋筋商店街といい、全長二・六キロメートル、店舗数六〇〇で、日本一長い商店街だともいう。駅を出て左に曲がれば、すぐに商店街にぶつかり、左右両側に賑やかな通りが続くが、ここで右へ曲がり、少し歩いた左側に、この店がある。
中に入ると、左側に長いカウンターが続き、右側には小さなテーブルが並ぶ。置くには、少し大きなテーブル席もあるようだ。落ち着くし、くつろげる。商店街の賑わいが、暖簾を通して少しだけ店内にも入ってくる。外より少しだけ暗い、明かりの加減もいい。素晴らしい居酒屋空間である。短冊と黒板にメニューがあるが、何でもあって、しかも安い。何となく、メニューをメモしたり、ましてや写真に撮ったりするのがはばかられるくらいに安い。私が食べたのは、はもちり二四〇円、ポテトサラダ二〇〇円など。いちばん高いくじらの刺身も五〇〇円。しかも、ビールは大瓶三五〇円、酎ハイは二六〇円である。
朝から開いている。月曜の午前中だというのに、席は半分以上埋まっていて、地元の中高年たちが飲んでいるが、決して飲み過ぎず、静かにくつろいでいる。どこかで、大阪大衆酒場の最高峰という評をみたが、なるほどと思わせる。大阪へ来たら、必ず寄りたいものである。ちなみにビールはアサヒだが、頼めばキリンも出してくれるようだ。(2009.7.13)

大阪市北区天神橋5-7-28
月〜土 8:45〜23:30 日祝 9:45分〜23:30分 月4回不定