橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

大阪・天満「銀座屋」

classingkenji2009-07-22

満足しつつも、ここは帰りの電車の予定などないときに、もう一度じっくり楽しみたいなと天満酒蔵を出る。まだ少しだけ時間がある。そこで、駅前のこの店へ。立ち飲み店だが、店先の看板に「ビンビール330 生ビール(中)300」などと書いてある。驚くべき安さだ。
コの字型カウンターの中が調理場という、よくあるスタイルの立ち飲み屋だ。まだ一二時過ぎだが、すでに中高年男性が何人か飲み始めている。とにかく、安い。しかし酎ハイ類は二五〇円、日本酒は一合二五〇円、焼酎は二三〇円から二八〇円というのと比べると、ビールの安さが際立っている。基本はアサヒだが、キリンも置いている。料理はというと、八〇円のしそにんにく、らっきょ、枝豆、空豆から始まって、たいがいのものが三〇〇円以下。日替わりのホワイトボードには刺身もいくつかあり、まぐろ二八〇円、たこ三〇〇円、かんぱち三三〇円、ひらまさ三〇〇円など。さすが、立ち飲み天国の大阪。東京とは安さのレベルが違う。感動しながら、一五分ほどで店を出る。酎ハイと二品で、勘定は四五〇円。
これまで大阪は、仕事の関係で行ったホテルの立食や、梅田周辺とミナミの中心部の店しか経験がない。一度、居酒屋めぐりだけを目的に三泊くらいしてみたいものである。いつになったら、実現できるか。(2009.7.13)

大阪市北区天神橋4-11 天満駅