橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

広尾「ことぶき」

classingkenji2007-08-02

今日から聖心女子大学の集中講義。駅から大学の門まではほんの三分くらいで、その間は広尾商店街。一〇年ほど前来たときは、庶民的な商店街だったという印象があるが、今はけっこうおしゃれな商店街になっている。でも、焼鳥屋があることをしっかりチェック。四コマの講義を終えて直行したのが、ここ「ことぶき」である。暑い一日だったが、店の前は広く開け放たれていて、開放的。店の前には、ホッピーののぼりがはためいている。
店の右側にはL字型カウンターがあり、左側には長いテーブルがならぶ。手前に八人掛けが二卓、奥は左側にもスペースがあって、一二人掛けが二卓。こういうテーブルは、グループ客にも一人客にも対応できるのが利点。壁には、飲み物メニューの黄色い短冊、料理メニューの赤い短冊、そして串焼きメニューの木札が並ぶ。私はカウンターに座り、すぐにホッピーを注文。ホッピーは中三〇〇円、外二〇〇円と、外の方が大幅に安いという変わった価格設定。中お代わりで二杯飲むと、一杯当たりは四〇〇円ということになる。やや高いが、場所柄仕方があるまい。串焼きは、ほほ肉、タン、豚トロ、野菜などが一五〇円、モモ、レバー、ハツなどの鶏関係は一八〇円。中生は四八〇円、サワー類は三八〇円。
まだ五時半ごろだから、客は少ない。カウンターに座っているのは、カジュアル姿で野球帽をかぶった四〇代男性。この近辺で野球帽とは珍しいが、ちゃんとデザインされたTシャツを着ている。クールビズの四〇男性、同じく五〇代男性。そして通勤着の三〇代女性と、カジュアルな二〇代男性の三人組。テーブル席には、おしゃれした二〇代男性二人組と、スーツにネクタイ姿の五〇代男性と四〇代男性。後から来てカウンターに座ったのは、タンクトップにカーディガンの三〇代女性と、Tシャツ姿の三〇代白人男性。焼鳥屋とはいえ、やはり都心を感じさせる客層である。安いというわけではないが、大衆酒場的な焼鳥屋への欲求を満たしてくれる店が商店街にあるというのは重要なことだ。大衆酒場は、商店街の必須アイテムなのだから。(2007.8.1)