橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

江古田「あぶさん」

classingkenji2009-06-25

この店については、二年前に書いたことがある。その後も何回か来ていたのだが、今日久しぶりに寄ってみると、「この店、進化したな」と思わせるものがあって、もう一度取り上げてみたくなった。
メニューが増えている。「血管」というのがあって、串は九〇円、刺身は三八〇円。壁の貼り紙には、血の滴るような字体で書いてあるのだが、実際はきれいな白っぽい色をしている。大動脈の部分だろうか。心地よくかみ切れて、クセもなく美味しい。もつ焼きはすべて九〇円だが、いずれもボリュームがあり、しかも美味しい。今日食べた中では、テッポウがとくに良かった。飲み物では、「メガホッピー」というメニューがある。貼り紙には「日本初上陸」とあって笑わせるが、近くの若者が注文したのを見ると、八〇〇ミリリットルくらいあるかという大ジョッキ入りのホッピーである。これが五五〇円で、「メガ中」は四〇〇円とのこと(普通のホッピーは三八〇円、中は二五〇円)。氷入りの濃いめのホッピーが、普通の二杯分ということになる。これは、酔いが回りそうだ。
最近は江古田も、客が少なくて外で呼び込みをしたり、カウンターで主人がぼんやりしたりしている店が目立つが、この店はかなり賑わっている。昨日は「街の古層」について書いたけど、この店はどうか。若者が多いのだが、最近大学に入ってきたというより、どうも江古田に定着したような雰囲気の若者が中心だ。「中古層」といったところか。江古田も、なかなか重層的である。(2009.6.16)

練馬区旭丘1-67-9 
16:00〜24:00 無休