橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

大阪・鶴橋「岩山海」

classingkenji2009-07-16

仕事が終わったのが五時過ぎ。ホテルに荷物を置き、鶴橋へ出かける。鶴橋は以前から気になっていた場所だが、行くのは今回が初めてだ。もちろん、目当てはホルモン焼なのだが、最初からホルモン店に入って、ホルモン店ばかり梯子するというわけにもいくまい。そこで一軒目は、人に聞いてネットで情報を集めておいた海鮮料理の店へ行くことにする。
場所は、駅前のマーケットのいちばん端の、さらに道を渡った向こう側で、駅から五−六分歩いただろうか。店名は「いわさんかい」と読む。一階はカウンター席で、二階にはテーブル席と座敷があるらしい。メインの料理は境港直送の魚介類の炭火焼きで、注文すると店員が、カウンターに切られた炉に赤く起こった炭を入れてくれる。金網を載せ、自分で焼加減をみながら焼くのである。このやり方は、ちょっと「トロ函」に似ている。内装が似ているというわけではないが、気さくな雰囲気にも共通するところがある。もしかすると「トロ函」は、大阪で店舗を拡大しつつあったこの店をヒントに考えられたのかもしれない。
帆立は一枚三〇〇円だが、この日はサービスでなんと一〇〇円。その他、サザエ二個六〇〇円、はまぐり三個五〇〇円、スルメイカ五〇〇円、岩ガキ五〇〇円、あゆ三〇〇円、ハタハタ三〇〇円など。私は帆立、岩ガキ、ハタハタをいただいた。日曜日だから仕方がないのかもしれないが、鮮度がとりたてて良いとは思えなかった。鶴橋店だけのメニューとしてホルモンの串焼きがあったが、一〇本セットで一〇〇〇円とのこと。一人では無理そうだから、あきらめる。生ビールは三五〇円と安いが、スーパードライのみ。瓶は五〇〇円ながら、ありがたいことにキリンラガーがあったので、これを飲む。酎ハイ類は三〇〇円、明るい農村、富乃宝山、中々など、焼酎が何種類かあり、各五〇〇円。
一階カウンターは、後ろが開け放されていて、オープンエアー感覚だ。料理の水準が全体に高い大阪のことだから、とりたててお勧めというほどではないが、ビジネスモデルとしては面白い。ただし、もう少し涼しいときに行く方がいいかも。(2009.7.12)

大阪市生野区鶴橋3-4-10
11:00〜14:00 17:00〜24:00
http://www.iwasankai-tsuruhashi.com/home/