橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

広尾「もくもく」

classingkenji2009-08-05

今日から聖心女子大学で集中講義。名門のお嬢様女子大だけに警備は厳しく、中に入るときは必ず守衛に呼び止められる。身分証携帯も必須だ。学生は、たいへんお行儀がいい。授業中の私語などは皆無だし、眠っているのも、まあ一−二名程度だ。
授業は六時前に終わり、広尾商店街あたりを散策する。一昨年に来たときは、「ことぶき」というやきとり屋に入った。悪い店ではないのだが、やはり新しい店を開拓したいところだ。ところが、店の多くはレストランかチェーン店、でなければ「和風だいにんぐ」的な店ばかりで、私好みの大衆酒場はみあたらない。まあ、ここならと入ったのが、この店。手前にテーブル席がいくつかあり、奥にカウンター。カウンターの上には、焼酎のボトルが並んでいる。生ビールはアサヒだが、瓶ビールにキリン(中瓶五五〇円)があったので、これを注文。
焼鳥は一五〇円が中心で、ネギマ一八〇円、ボンチリ二〇〇円、手羽先二五〇円など。豚のモツ焼きはシロだけで、これは二〇〇円。変わった価格設定である。焼鳥は、けっこう美味しい部類といえる。ただし豚シロは、下ごしらえがよくないのか硬く、しかも切り方が大ざっぱ。あくまで、焼鳥を食べる店だろう。牛煮込みというのがあったので注文してみると、ほほ肉やタンもとと思われる筋肉質の部分が、野菜といっしょに味噌味で煮込まれたものが出てきた。おいしいが、ちょっと煮込み不足だろうか。
酎ハイ類は四二〇円。同じ値段でホッピーがあり、注文してみると、タンブラーに作って持ってきた。ホッピーと焼酎、氷のバランスは悪くないが、炭酸が抜けてしまっている。ふと、近くに並んだ焼酎のボトルをみると、キッコー宮の本格麦焼酎というのがある。これは、初めて見た。ロックでいただいたが、麦らしいクリアな味で、最近流行りの焦がし麦系とは対極の味。なかなかよくできた焼酎で、もっと普及してほしいものである。
この店、ラーメンもあり、昼間はラーメン店として客を集めているらしい。この界隈で焼鳥が食べたくなったら、ここへどうぞ。(2009.8.4)

渋谷区広尾5-2-26 M2ビル広尾
11:30〜03:00 16:00〜22:30 不定