橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

高田馬場」「鳥やす」

classingkenji2009-07-14

このブログでは、これまでおそらく四〇〇軒くらいを紹介してきたと思うが、まだまだ空白地帯がいくつもある。そのひとつが高田馬場で、今日は山手線で途中下車してみる。まず向かったのは、有名な焼鳥屋のこの店。駅からガードをくぐって山手線の外に出ると、すぐ右手に「さかえ通り」の入り口があるから、ここに入って三分ほど歩いた右側。
入り口をみるとそんなに大きな店にみえないのだが、中は意外に広い。隣の建物をあとから継ぎ足したのだろう。手前にカウンターが九席ほどあり、他はテーブルだが、奥の方まではよく見通せない。しかも、二階まであるらしい。ほとんど満員なのだが、次から次へと客がやってくる。店員がよく店内を把握していて、その都度「お二階へどうぞ」「今お会計の方が済んだらご案内できますが」「お会計のお客様が出次第ということで、少しお待ちいただけますか」などという。
やきとりが安い。いちばん安いもつとすなぎもは、何と六〇円。正肉や皮、ぼんちり、ネギマなどが七〇円、いちばん高いわさびささみ、明太ささみでも一二〇円。枝豆二五〇円、ぬた三〇〇円など、料理もいろいろある。煮込み(三〇〇円)は手羽と野菜のスープ煮で、もつ煮込み(三〇〇円)は豚シロの煮込み。酒はここまで安くはないが、十分リーズナブル。
客層は、実に多様だ。スーツにネクタイ姿も四分の一ほどいるが、あとはカジュアルな中年カップルやグループ客、男女混成の若者グループ、学生など。けっこう金のありそうなサラリーマン、キャリアウーマンから、貧乏学生まで、すべてに支持される店なのだろう。
大きな店なのに焼手が二人しかいないから、注文の品が届くのがやや遅いのは難点といえば難点。初めての店ということで、奨められるままやきとり盛り合わせを注文したら、なんと七本セットだった。しかも、それぞれが大きく、普通の一・五倍くらいある。これで完全におなかが一杯になり、今日は一軒であえなく帰宅。途中の道にも、また横丁にも、行ってみたい店がたくさんある。これからときどき、途中下車してみよう。(2009.7.10)

新宿区高田馬場2-14-4
11:00〜14:00 17:00〜24:00 日休