蒲田「鳥万」
三軒目は、この店。蒲田を代表する大衆酒場で、なんと一階から四階までが居酒屋フロアという老舗、「鳥万」である。テーブル席中心の一階は満員だったので、二階へ。L字型カウンターの隅のほうに席を取る。
ともかく、メニューが豊富で、何でも安い。ビールは大瓶が四九〇円、中生が三七〇円、日本酒は小二一〇円、大四〇〇円、ハイボール、酎ハイなどは二八〇円(例外はカシスウーロンの三〇〇円のみ)、ホッピーセットが三七〇円。料理は、やきとり九〇円、煮込み二八〇円、刺身は二八〇円からで、いちばん高いまぐろでも四五〇円、刺盛は七二〇円。鮑の煮貝が三二〇円とあるので注文してみると、輸入物らしく濃厚な旨みこそないものの、十分楽しめる。DAITENさんも、満足げ。人をいい店に連れてきて、気に入られたときのうれしさは、居酒屋好きなら誰もが知っているだろう。
大田区は、私の住む世田谷に接しているが、ある意味ではかなり遠いところにある土地だ。地下鉄が縦横に走る都心は、一体化の傾向を強めているが、郊外はばらばらのままである。とくに、世田谷区は広いこともあって、一体感に欠ける。東急沿線と、京王・小田急沿線は別の地域みたいで、わずかに旧玉電の世田谷線でつながっているだけ。沿線住民の意識も、微妙に違う。むしろ世田谷の南部は、大田区との連続性が高いといっていい。それというのも、環状線らしい環状線が、山手線以外にないからだ(大江戸線は、西側が山手線内側を走っている上に、南北方向の広がりに欠けるから、不完全である)。昭和初期には、大井町を起点に、中野、板橋、千住を経て州崎に至る、文字通りの環状線「東京山手急行電鉄」が計画されていたが、資金難から難航するうちに、地価高騰と開発で、実現が不可能になってしまった。もちろん、環七または環八の下に地下鉄を通すなら、かなりこれに近いものができるはずで、実際、メトロセブン構想、エイトライナー構想などもないわけではない。しかし、実現するとしても相当先のことだろう。
というわけで、大田区を訪れることは、これからもそう多くはないだろうけれど、遠くないうちに再訪することを約して、DAITENさんと別れたのだった。(2009.4.18)
大田区西蒲田7-3-1 16:00〜23:00(日15:00〜22:00) 無休