橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

ラズウェル細木『酒のほそ道』第24巻

これは毎回というわけではなく、ときどき買っている酒と肴のマンガ。居酒屋で旬のものを食べる、初詣やハロウィーンなどの年中行事、ワインオープナーや箸袋など酒に関する小物のお話など、ストーリーにはいくつかのパターンがあって、けっこうバリエーションが豊富。主人公の宗達がときどき簡単な肴を作るが、著者はなかなか料理の心得があるようだ。
マンガの間にエッセイが入るのも特徴。面白かったのは、電子レンジの燗酒は不味くてすぐ冷めるという説を実験で検証したくだりで、味は変わらないし、冷めやすいこともないとか。当たり前といえば当たり前だが、笑ってしまった。締めたばかりの鯛と昨日締めた鯛の刺身を、同時に口に入れて歯ごたえと味の両方を楽しむというのは、ばかばかしいアイデアながら、試してみる価値があるかもしれない。

酒のほそ道 24 (ニチブンコミックス)

酒のほそ道 24 (ニチブンコミックス)