橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

志村三丁目「新潟」

classingkenji2009-09-10

今日は、ちょっと必要があって板橋へ。用事を済ませたあと、まずは志村三丁目から少し都心方向へ戻ったガード下にある、この店。「猟師(ハンター)の店」と称し、季節には店主が自分で撃ってきた猪や鴨を出す。酒は、主人の郷里である越後の酒。以前、このあたりに住んでいたときは、ときどき通ったものである。
二年前に来たときも気になったのだが、店がだんだん寂れてくる。今日の客は、私一人だけ。最初に注文した生ビールは、明らかに劣化している。店内も、越後の地酒の瓶が整然と並んでいたはずが、少し荒れた感じになっている。味噌だれの焼きとんの味は、以前とかわらない。しかし、トッピングの白胡麻が、湿気っている。酒はその都度、冷蔵庫から出してくるわけだから決定的な劣化はないが、香りは少し飛んでいるようだ。
以前、このあたりには工場や企業のオフィスがいくつかあったが、移転や倒産でずいぶん減った。これにともなって、客も激減したのだろう。そういえば、以前は店に出ていた女将さんの姿がない。タイミングがよければ、うまいジビエが食べられるはずだと思うのだが。行きたい人は、事前に電話で問い合わせた方がいい。(2009.9.4)

板橋区志村3丁目28-1
03-6783-1968