橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2010-01-01から1年間の記事一覧

静岡「鹿島屋」

次に向かったのは、七月にも行った老舗の「鹿島屋」。創業は一九二八年で、現在の主人・角田光春さんは三代目。この店の初代と「多可能」の初代は、近くの酒問屋でいっしょに修行したことがあり、その縁で両店は今でも親しい間柄なのだという。 名店として並…

静岡「多可能」

二泊三日の予定で、静岡へ。七月にも訪問したばかりだが、今度はさほどの用事もなく、もっぱら居酒屋が目的である。 静岡は城下町だが、駿府城の天守閣は早くに失われ、残る御殿や城門も明治に入って取り壊されたから、壕と城壁以外は残っていない。一九四〇…

夏休み

明日から一〇日間ほど、たまにはブログから離れた日々をということで、更新をお休みさせていただきます。 経験のある方も多いでしょうけれど、ブログを更新しなければならない→なじみの店だけではなく、行ったことのない店へ行く→メニューや値段などちゃんと…

銀座「樽平」の冷や汁

浜松町から、銀座へ移動する。久しぶりに「樽平」へ行ってみることにした。 平日だからなおさらだが、サラリーマンが多い。この暑さだから、冷酒を二種類ほどいただく。肴は、たいがい注文することにしている漬け物の盛り合わせ、そして米沢料理という「冷や…

浜松町「名酒センター」

浜松町の文化放送で番組収録の後、どこへ行こうかと考える。せっかく浜松町に来たのだから、ここに寄ってみよう。前回来たのは二〇〇六年の秋だったから、ほぼ四年ぶりになる。 内装が少し変わったようだ。L字型のカウンターができて、すっきりした感じだ。…

浜美枝さんと対談しました

文化放送で、浜美枝さんと対談しました。テーマは、『居酒屋ほろ酔い考現学』。当日はちゃんと読んでから対談に臨んでくださり、的確な質問をいただきました。すでに、浜さんのブログで紹介されていますが、放送は八月二八日の予定です。居酒屋ほろ酔い考現…

祐天寺「ばん」

恵比寿の次は、祐天寺の名店「ばん」へ。久しぶりの訪問である。 相変わらず大繁盛で、主人は見ていてハラハラするほど忙しくしておられる。以前はよく、客に話しかけておられたが、もうそんな余裕もなさそうだ。味も、安さも、以前の通り。少しだけ値上げし…

恵比寿「かっぱちゃん」

今日は、聖心女子大での集中講義も最終日。試験をしてすべてのスケジュールを終わり(おっと、採点はまだだ)、恵比寿へ。広尾へは恵比寿経由だから、行き帰りに恵比寿駅に降り立つことになる。寄らない手はない。今日は、恵比寿横丁へ行ってみることにした…

西麻布「浜の家」

外苑西通りから六本木通りに出たところ、道路の反対側に、いかにも場違いな一軒家がある。それが、この「浜の家」。提灯には「おでん やきとり」とあり、外壁に所狭しと下げられた木札には、レバ、ハツ、カシラ、シロ、牛すじ、薩摩揚げ、京がんもなどと、品…

西麻布「せいざん」

この日は、広尾の聖心女子大学で集中講義。暑いさなかに六時間の講義を終え、さてどこで飲むかと考えた。広尾は昨年、隅から隅まで歩いて探索したので、今日は別の場所へ行ってみようと、北上して西麻布へ行ってみることにした。広尾から外苑西通りの一本裏…

本郷「加賀屋」

ちょっと用事があって本郷へ行き、帰りにこの店に寄る。先日紹介した「TOKYO大衆酒場」の記事によると、この店が加賀屋の「本店」ということらしい。店内は細長く伸びていて、奥に座敷がある。三年前に来たとき、店員に気になる点があって苦言を書いたことが…

木挽町「楓」

ビールでのどを潤したあとは、木挽町へ。目指すは、静岡料理が売り物のこの店である。 静岡料理というものが存在するかといえば少々あやしいが、他の地域にあまり見かけないユニークな料理はいくつかある。まず、静岡おでん。黒はんぺんはおでんのネタとして…

汐留「BEER DINING LION 汐留店」

今日は高田馬場で講演をしたあと、勝どき・月島方面へ。先日、カレッタ汐留のレストランで湾岸のジェントリフィケーションの様子を上から観察したので、今度は下からじっくり見てやろうというわけである。上から見ると、超高層ビルが林立しているように見え…

青山ジャングルと「あべちゃん」

今日は、根津美術館へ。仏教美術の展示を見たあと、六本木方面へ歩く。青山墓地の端あたりで見つけたのが、この風景。都心のジャングル、まさに奇観である。手前の植物はマングローブ、ではなくて壁を蔓性の植物が這っているだけだが、見た目はかなり似てい…

江古田「アンダルシア」

今日は武蔵社会学会の大会。大会後の懇親会の会場が、このレストラン。看板には「モロッコ スペイン レストラン」とあり、ジブラルタル海峡を隔てた二国の料理を出すということらしい。店の日本語名は「アンダルシア」だが、アルファベットではアラビア語の…

『嗜み』2010年夏号

日本ペンクラブの編集協力で、文藝春秋が出している雑誌です。連載中の「全国居酒屋ほろ酔い考現学」、今回は青森編。「五事」「篤」「小政」「うさ美」など六軒を紹介しています。青森駅前の複合施設「アウガ」の新鮮市場で、カニを物色する私の写真も。 他…

サーモンのジェノベーゼソース

ベランダのプランターに、バジルを植えている。バジルはトマトの料理やパスタソースに欠かせないが、香り成分が揮発性油なので、乾燥品では香味が決定的に欠ける。かといって、一度に使う量は少ないから、いちいちスーパーで買ってくるのも不経済だ。植えて…

「小笠原伯爵邸」

今日は、どういう訳か妻の大学の同窓会の同伴で、新宿河田町へ。このレストランは、一九二七年に建てられたスペイン風の邸宅で、旧小倉藩主だった小笠原家の所有だったもの。戦後、米軍に接収された後、東京都の所有となったが、曲折を経て民間に貸し出され…

ハモ横化する三軒茶屋

今日は、東大工学部でヤミ市研究会。いつものように若手の皆さんからの報告を受けて、終了後は実地調査へ。向かったのは、三軒茶屋である。ここへ来るのは一年半ぶりくらいだが、目を見張る変化があった。若者が経営する新しい店が増えているのである。ワイ…

太田和彦『居酒屋百名山』

太田和彦もずいぶんたくさんの居酒屋本を書いてきたが、本書は「私の代表作であり集大成」なのだという。そのスタイルは、一言でいえばストイック。太田の本によくあるデータブック的性格や、紀行文のような広がりは最低限まで抑制され、居酒屋の佇まいと、…

「つるかめ食堂」の「バカでアホでフラメンキン」

今日で今学期の授業は終わり。まだ試験や修士論文の指導など、いろいろ仕事は残っているが、いちおう一区切りということで、昼からビールを飲むことにして、新宿の思い出横丁へ。入ったのは、「つるかめ食堂」。三年前も同じようなことがあって、このときは…

江古田「飛車角」

授業の後、研究室で雑用をしていたら、学生たちがやってきて、「先生、飲みに行きませんか」という。どこへ行こうかと考えたが、駅の北口のこの店へ。 かつて江古田の北口に「黒田武士」という居酒屋があった。安くておいしく、昼間はボリュームのあるカレー…

「まるかや本店」のナンコツスモーク

松戸へ行ったからには、帰りに北千住へ寄らないと。新しい店を物色し、まず入ってみたのは「M」という店。「やきとり1本30円」の貼り紙にひかれたからで、店内は若者でけっこう繁盛している。焼鳥はたしかに安いが、これでは不合格。焼鳥は、ムネ肉の小片…

松戸「鳥孝」

「松戸酒場」で常連客たちが話題にしていたのを聞いて、相当の老舗らしいと知ったのが、この店。一見すると居酒屋というより料理屋のようにも見えるが、れっきとした大衆酒場である。白地に「鳥孝」と書かれた暖簾をくぐると、八人掛けのテーブルが三卓。数…

松戸「松戸酒場」

ふと思い立って、松戸へ行ってみた。表向きの目的は、松戸市立博物館と常磐平団地の見学。常磐平団地は、一九五九年に入居が始まった巨大団地で、総戸数は五三〇〇。多くの団地で建て替えが進む中、自治会が一致団結して建て替えを拒否し、高齢化に取り組む…

「やるき茶屋 池袋西口店」

ワールドカップでの日本の健闘は、意外だった。この日は、日本が3−1でデンマークに勝った日。どこで飲もうかと考えながら歩いていたら、こんな看板を見つけた。「お祝いして 最初のドリンク1杯31円」。「大ジョッキはかんべんしてください」とあるのが…

高田馬場「新橋やきとん 高田馬場店」

今日は仕事のあと、思い立って高田馬場へ。まずは、先日バーボンのボトルをキープした「マイルストーン」に行き、ジャズを堪能。一度、この装置でジョージ・セルのモーツァルトを聞いてみたいものだ。その後、途中の道で見つけたこの店へ。チェーン店だが、…

池袋「ふくろ」の「稚鮎の串カツ」

今年は、どういう訳かスーパーで稚鮎を見かけることが多かった。好物なので、ずいぶん食べた。いちばん美味しいのは天ぷらで、これは「美味しんぼ」にも登場した。しかし技術がいるうえ、何しろ使う油の量が多く、あまり揚げ物をしない我が家としては非経済…

汐留「BICE」

今日は知人の経営する会社のパーティーに招かれて、汐留のイタリアンへ。ここはミシュランガイドで星を一つ取った店で、私にとっては初めての星付きレストランということになる。立食形式のパーティー料理のせいかもしれないが、味はまあまあといったところ…

「ブラッスリー銀座ライオン 静岡店」のエーデルピルス

翌日の仕事は午前だけ。軽く昼食をいただいたあと、静岡駅まで行き、わさびやわさび漬けなど買物を済ませる。そして向かったのは、この店。駅ビルの一階にあり、改札からすぐだ。 国産のピルスナータイプのビールで最高峰は、何といってもサッポロのエーデル…