橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

静岡「鹿島屋」

classingkenji2010-09-02

次に向かったのは、七月にも行った老舗の「鹿島屋」。創業は一九二八年で、現在の主人・角田光春さんは三代目。この店の初代と「多可能」の初代は、近くの酒問屋でいっしょに修行したことがあり、その縁で両店は今でも親しい間柄なのだという。
名店として並び称されるが、こちらは大衆酒場というより、海の幸にさらに手をかけて出す料理屋風の店で、酒の種類も多い。八年前に内装を変えたとのことで、モダンな雰囲気がある。剣の達人だったという初代が、剣捌きを庖丁捌きに生かして評判になったという鰹の刺身(写真)が当時からの名物で、血合いをきれいに切り落とし、ピンと角の立ったその姿は、実に見事である。(2010.8.5)

静岡市葵区上石町7-15
17:00〜23:00 日休