橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

江古田「飛車角」

classingkenji2010-07-21

授業の後、研究室で雑用をしていたら、学生たちがやってきて、「先生、飲みに行きませんか」という。どこへ行こうかと考えたが、駅の北口のこの店へ。
かつて江古田の北口に「黒田武士」という居酒屋があった。安くておいしく、昼間はボリュームのあるカレーや定食などを出し、地元民や日芸の学生などで賑わい、四〇年ほどの歴史を刻んでいたが、店主の高齢のため、閉店。この跡地にできたのが、この店である。
看板どおりのやきとり屋で、それ以外には冷奴やおしんこ、もろきゅうなど、簡単な料理しかない。焼鳥と焼きとんが、九〇円から一三〇円。細かな価格設定は、良心的といえる。ボリュームがあり、味も悪くない。ビールが、生、大瓶とも四八〇円、サワー類三〇〇円、ホッピーセット三五〇円と、酒も安い。学生を連れてくるにはちょうどいい店だ。前の店と同様、地元の人々や学生たちで賑わっている。
江古田は飲食店の激戦区。安いのは当たり前で、美味しくないと生き残れない。生き残った老舗は、どこへ出しても恥ずかしくないレベルにある。この店は、最近できた店の中では生き残りの可能性が高い部類と見た。(2010.7.6)

練馬区小竹町1-58-1