橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2013-01-01から1年間の記事一覧

「ブリュセレンシス ビアフェスティバル」

買い物で西口公園を通りかかったら、「ビアフェスティバル」の文字が目に飛び込んできた。テントがずらりと公園の外周部を取り囲み、中に席ができている。ベルギービールのフェスティバルで、二六日から三日間の開催とのこと。これは、行ってみないわけには…

「ブラッスリー・ル・リオン」

西武デパートの中に本格的なフレンチ・カフェがあると聞いて、出かけてみた。スポーツ用品売り場のすぐそばという立地だが、オープンな雰囲気の店内に座ってみると、デパートの中の通路というのは、商店街の道路のようなものだから、違和感がない。 料理は本…

「和酒酔処 わく」

池袋にまたひとつ、日本酒の美味い店ができた。以前入った時は、何の変哲もない店だったのだが、いつの間にか経営が変わり、この二月に開店したらしい。 英君、開運、花陽浴、遊穂、風の森、東北泉など、いいところを揃えいて、五百円均一とはうれしい。魚料…

「酔い心地 真っ先」

何度も書いているけど、池袋にはいい日本酒を置く店が多い。その多くは、日本酒好きの比較的若い店主がここ数年の間に開いた店だ。この店も、そのひとつ。池袋といっても、駅から北側へ10分ほど歩いた住宅地の中である。 小さな店で、カウンター六席と小さな…

所沢「BUGSY」

この日は、留学するゼミ生の壮行会で、この店へ。イタリアン中心のカジュアルダイニングである。 ワインの種類が多く、値段はリーズナブル。生ハムとオリーブの盛り合わせ、カルパッチョ、パテなど、前菜的な料理がいろいろあるのは、酒飲みにはうれしい。し…

「而今」の会

いま、いちばん注目されている日本酒といえば、三重の「而今」だろう。この「而今」の純米酒から大吟醸まで、何と一五種類も試飲できるイベントがあるというので、行ってきた。場所は、日本酒と鰻の店として名高い千駄木の「稲毛屋」である。 ずらりと並んだ…

富士見台「くろちゃん」

授業のあと、どこで飲もうかと少し考えた末、まだ行ったことのないこの店へ。富士見台の駅を降りて東南方向へ少し歩き、区界を越えて中野区に入った場所だ。 この店の店主は、野方の「秋元屋」、中野の「石松」と、二大名店で修業したという人物。秋元屋系と…

「エスペルト」

楽天の数あるワインショップのなかでも有名店のひとつ、ワイナリー和泉屋が経営するワインバー。とくにスペインワインが充実していて、店名になっているセラー・エスペルトの製品をはじめとして、珍しいものが多い。料理もワインに合うスペイン料理がいろい…

「小手指ショッピングアーケード」

小手指にまともな居酒屋なんかないだろう、と思っていたが、同僚に古くからある飲食店街の存在を教えてもらい、さっそく行ってみることにする。 なるほど、道の両側に居酒屋がちらほら。ビールの看板あり、ホッピーの提灯あり。元は魚屋だったという「佐藤水…

「三太郎」

立教大学の近くで見つけた店。日本酒が充実していて、メニューには数えるのが嫌になるほど、旨い酒が並んでいる。而今、川鶴、十四代、花陽浴、獺祭、などなど。酒の価格はきわめて良心的で、七勺で四〇〇−五五〇円が中心。獺祭の三九ですら九〇〇円だ。料理…

「どんどこ」

先日行った所沢の「東家」とグループ店だとのことで、入ってみたのがこの店。ありふれたチェーン居酒屋のような外観だが、店頭に「獺祭」の垂れ幕がある。 焼鳥・もつ焼きをメインに、鳥のたたきや刺身、九州風の真っ黒に焼いた焼鳥など。日本酒と焼酎がいろ…

「若手の夜明け」in 渋谷

この日は、渋谷シダックスホールのこのイベントへ。参加したのは、陸奥八仙、一白水成、寫樂、仙禽、相模灘、青煌、羽根屋、紀土、出雲富士など、いま評判の若手・二七蔵。本醸造から純米・純米吟醸、大吟醸など、各蔵数種類ずつだから、全部飲んでいるとた…

所沢「東屋」

この日はゼミのあと所沢へ移動して、一回目のゼミ飲み会。場所は、学生がバイトしているというこの店。繁華街とは反対側の住宅地のなかで、これは教えてもらわないと見つけられそうにない。古民家風の造りで、板の間に座布団を敷いて座る。 メインは豚と鶏の…

近所の無国籍居酒屋

引越しの直後は、まだ食器も調理器具も使えないので、何か買って来るか、外食するかしかない。というわけで、この日の夕食はここで。 小さな店で、男性が一人でやっている。なかなか凝った料理を出す。本日のおすすめの春野菜の盛り合わせは、ワラビ煮、新じ…

「聘珍樓」

この日は武蔵大学の元同僚など何人かと夕食。どういうわけか、場所はサンシャインシティのここ。有名な店だが、私は他店舗も含めて初めてだ。食べたのは、紅梅之筵という五〇〇〇円のコースで、これに一〇〇〇円追加して、ビール・紹興酒・オレンジジュース…

所沢「百味」

今日は研究室の引越しで、まず武蔵大学へ。荷物の搬出を終えて、所沢キャンパスへ。 書籍がたくさんある引越しの場合、本の配列がでたらめになるのを覚悟で梱包と開梱を業者に任せるか、それとも疲労困憊するのを覚悟で自分でやるか、思案のしどころだ。今回…

転居しました。

これまで九年間、世田谷区経堂に住んできました。このブログでもしばしばご紹介したように魅力的な居酒屋やレストランが多く、快適に暮らせる街でした。しかし四月から早稲田大学所沢キャンパスに勤務することとなり、通勤時間が二時間近くになってしまいま…

中板橋「炭火や」

久しぶりの板橋、二軒目はここ。初めて入って店で、かなり新しそうだ。 もつ焼きは、カシラ、ハラミ、レバ、タン、チレ、テッポーなどひととおり揃って、一本一二〇円。うれしいのは、刺身がレバ、チレ、ハツ、コブクロと揃っていること。レバ刺しはハーフサ…

中板橋「おがわ」

この日は中板橋へ桜を見に行くことにする。まずは「おがわ」へ。板橋に住んでいた頃、何度か訪れたことがあるが、今回は一〇年ぶりくらいだろうか。しかし、やはりいい店だ。日替わりの刺身、もつ煮込みに焼鳥、揚げ物、炒め物、焼き物など何でもあって、何…

転任のお知らせ

11年間勤めた武蔵大学を退職し、4月から早稲田大学人間科学学術院(所沢キャンパス)に勤務することになりました。これからは、西武線沿線と池袋に力を入れていこうかと考えています。今後ともよろしくお願いいたします。

表参道「バルバッコア・グリル」

今日は学部の納会で、表参道へ。同僚のアンジェロおすすめの、ブラジル料理の店である。 テーブルにつくと、最初はビュッフェ形式の野菜料理と思い思いのドリンクで乾杯。すると、肉料理が次々に運ばれてくる。豚肉、鶏肉、ソーセージ、羊肉と、さまざまな部…

「海のそば」

大学からの帰りに、池袋へ寄る。見つけて入った立ち飲み屋が、ここ。店名の「そば」は「蕎麦」という意味でもあり、アゴ出汁の蕎麦を出すとのこと。経営は築地のマグロ専門仲卸店「相馬水産」とのこと。 ビールはサントリーで、プレミアムモルツ中ジョッキが…

椎名町「北の誉」

椎名町は、池袋から西武線に乗って一駅目。ほとんど都心のうちといっていい場所だが、下町風の庶民的な商店街のある住宅地だ。昔ながらの魚屋、八百屋、惣菜屋などが並び、いい古本屋もある。そして、居酒屋も。以前から入ってみたいと思っていた店に、入っ…

吉本隆明『吉本隆明の下町の愉しみ』

佃島で生まれ育った吉本隆明は、いったんは家族と共に公団の一戸建て住宅団地に移り住むものの、後には上野・千駄木あたりの下町、または地形的には山の手だが、下町的な雰囲気の濃厚な街に住み続けた。彼の下町への愛着を綴った文章は、小川哲生が編集した…

「日本酒スタンド 酛」

この日は、雑用を済ませてから新宿へ。まずは南口のかつてのドヤ街あたりを散策。そのあと、日曜日でもやっている日本酒の店はないかと考えて、思い出したこの店へ。ビルの地下一階で、細い通路に酒林が下がっている。コの字型カウンターの立ち飲み形式で、…

住吉「山城屋酒場」

この日は入試関係の会議のあと、少し空き時間があったので、東京都現代美術館で開催されている特別展「アートと音楽」を見に行く。評判通り、セレスト・ブルシエ=ムジュノの「バリエーション」は素晴らしい。大小さまざまな白磁のボウルが、水面をたゆたい…

「十徳 二葉店」

大学からの帰り、旨い日本酒が飲みたくなってこの店へ。 通常メニューにも、黒龍、〆張鶴、雑賀、酔鯨、大七、初亀などいい酒が揃っているが、保冷庫の上の日替わりメニューが素晴らしい。この日並んでいたのは、鳳凰美田・無濾過かすみ本生純米吟醸原酒、而…

「dancyu3月号 新しい日本酒の教科書」

いま、日本酒が美味い。数年前から多くの酒蔵で飛躍的に酒質が向上しているのに加え、新酒の季節である。日本酒の最近の動きに疎いなら、専門店で「純米吟醸無濾過生原酒」などと書いてある酒を探し、買って飲んでみるといい。日本酒の概念が変わるだろう。 …

江古田「かぐら」

今日は科研費の作業グループの新年会。学生たちが中心だから、安い店ということでここへ。何しろ、ビール中ジョッキが三八〇円、大瓶でも四四〇円、酎ハイ二六〇円、ホッピーセット三八〇円。地酒も数種類あって、浦霞、梅錦、一の蔵、越の鶴亀が三五〇円で…

立春朝搾り

日本名門酒会が毎年やっているイベントが「立春朝搾り」。立春の日、参加する全国の蔵元が夜半過ぎから醪を絞って酒にし(これを上槽という)、壜詰する。参加する酒販店も作業を手伝い、出来上がった酒を持ち帰り、その日のうちに売り出す。普通、日本酒とい…