橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「dancyu3月号 新しい日本酒の教科書」

いま、日本酒が美味い。数年前から多くの酒蔵で飛躍的に酒質が向上しているのに加え、新酒の季節である。日本酒の最近の動きに疎いなら、専門店で「純米吟醸無濾過生原酒」などと書いてある酒を探し、買って飲んでみるといい。日本酒の概念が変わるだろう。
そんないま、タイムリーな特集である。まずは、戦後日本酒界の歴史から説き起こす。これが実にコンパクトによくまとまっている。「注目の若手蔵10!」は、数年前まで無名だった酒蔵が、代替わりによって飛躍的に酒質を向上させた代表例を集めている。折り込み冊子の形を取った「脱『辛口の酒、ください!』のススメ」は、酒は辛口が良いものと思い込み、「辛口」を呪文のように唱え続ける一部の風潮に異を唱え、初心者の目を濃醇な旨酒に向けさせようとするもの。これも実に良く出来た記事である。
dancyuは年に1回くらいしか買わないが、これは絶対のおすすめだ。

dancyu (ダンチュウ) 2013年 03月号 [雑誌]

dancyu (ダンチュウ) 2013年 03月号 [雑誌]