橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

立春朝搾り

classingkenji2013-02-05

日本名門酒会が毎年やっているイベントが「立春朝搾り」。立春の日、参加する全国の蔵元が夜半過ぎから醪を絞って酒にし(これを上槽という)、壜詰する。参加する酒販店も作業を手伝い、出来上がった酒を持ち帰り、その日のうちに売り出す。普通、日本酒というものは醪の状態を見て最良の状態のときに上槽するのであって、仕込みのときに上槽の日が決まっていることはない。これを立春に合わせなければならないのだから、醪の管理がたいへんだ。杜氏たちは「大吟醸より神経を使う」のだという。
今年参加したのは三九の蔵だが、こんな酒だから近隣でしか売ることができない。近所の酒屋で売っていたのは、この二銘柄。東京・青梅の「澤乃井」と、栃木の「開華」である。上槽から十数時間で飲む酒は、フレッシュで香り高く、実に旨い。どちらも純米吟醸原酒だからボディもある方だが、澤乃井はすっきりとキレが良く、開華は濃醇で旨みが口いっぱいに広がる。
詳しくは、日本名門酒会のホームページで。販売店のリストも載っている。原則は予約制だが、参加店は多めに仕入れているから、まだ数日くらいは買えると思う。