橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

池袋「日本酒原価酒蔵 池袋店」

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 前から気になっていたこの店、ふと思い立って訪れてみた。
 たしかに日本酒の種類は多く、安い。注文すると100ミリリットルの小瓶に詰め替えたものを持ってくるのだが、その値段が、「醸し人九平次純米大吟醸」三三三円、「澤屋まつもと・純米吟醸」二九八円、「陸奥八仙・純米大吟醸」三一六円、南部美人純米吟醸」三〇四円、といった具合。移し替えて密閉しているから、品質はまったく問題ない。常時ほぼ満席なのも、納得がいく。問題は、料理。刺身の盛り合わせ(九九九円)を注文したが、薄っぺらく、少々干からびたものが三種類二枚ずつと、イクラおろしがほんの少し。美味しくない。酒はたしかに原価かも知れないが、料理で利益を稼ぐというビジネス。両者のバランスが、あまりにも悪い。
 酒も料理も適正価格で、という店のほうが、いいに決まっている。しかし店名に「原価」と謳うことで客は集まるのだろう。食事はほかの店で軽く済ませ、失敗のない酒のあてだけ注文して、酒を次々におかわりする、という使い方なら、いい店かもしれない。(2019.7.5)

豊島区南池袋1-19-4 B1F
月〜金15:00~23:30 土・日・祝14:00〜23:30 無休