橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2012-01-01から1年間の記事一覧

「オステリア・ピノ・ジョーヴァネ」

今日は、池袋で同僚の慰労会。酒はあまり飲まない人で、ラザニアが好物ということから、この店にした。 前菜二点のあと、出てきたのがフォアグラのソテーのピアディーナ巻きバルサミコソース。これは素晴らしい出来だった。ラザニアがメインということでパス…

オクトーバーフェストinお台場

五月なのに?という疑問はさておき、オクトーバーフェストへ行ってきた。ビールの味は、まあ期待どおり。本場のヴァイツェン、デュンケルはなかなか飲めないし、バンドの演奏も楽しく、場内は盛り上がっている。それでも、一杯一三〇〇円は高すぎ。私など、…

「希紡庵」

先日行った「あまてらす」と並んで、以前から行きたいと思っていた池袋の日本酒バー。今日、思い立って仕事のあとに行ってみることにした。外観は隠れ家バーのようで、中の様子はまったくわからない。思い切ってドアを開けると、L字型カウンター七席だけと…

「萬屋松風」と「Drinking Japan」

池袋の「萬屋松風」へ行こうとしたら、店の前に子どもから年配まで一〇人ほどの西洋人がたむろしている。席が確保できたのか、中に案内されるまでしばらく待った。いつものように一階のカウンターに座り、酒を注文。飲み始めたところへご主人が、一冊の本を…

金環食

雲を通してきれいに見えました。月曜の朝では、金環食見酒を飲むわけにはいきませんでしたが。

ヤミ市研究会in浅草

この日は、ヤミ市研究会。出版企画も大詰めで、だいぶ原稿らしくなってきた。 研究会のあとの実地調査は、浅草へ。露店から生まれた商店街や、凌雲閣跡、その周辺の銘酒屋街だった場所などを見学。そのあと神谷バーへ向かったが、案の定超満員で、一月に見つ…

『嗜み』No.14

連載中の「全国居酒屋ほろ酔い考現学」、今回は甲府市・甲州市篇。甲州市では「ルバイヤート」で知られる丸藤葡萄酒、レストランとカーブを持つ市の施設「ぶどうの丘」、甲府市では郷土料理屋の「奈良田 駅前店」、山梨産中心のワインバー「PIECE橘町」、鳥…

Chris Bunting, Drinking Japan

英語で書かれた、日本の酒と酒場のガイドブック。たいへん良く出来ている。日本の酒文化を論じた序論から始まり、第一章は日本酒、第二章は焼酎、第三章は泡盛、第四章はビール、などと続く。 日本酒の章を見れば、まず酒蔵と酒の製法の解説から始まり、日本…

「稲水器 あまてらす」

週刊誌の記者から取材申し込みがあった。居酒屋の歴史とおすすめ居酒屋について話が聞きたいとのこと。それで前から行きたいと思っていたこの店を、場所に指定した。池袋駅から少々距離があり、五叉路を過ぎたあたりにある。 自慢の日本酒は、東洋美人と而今…

代官山「ル・プティ・ブドン」のチーズビュッフェ

何度か行ったことのある、このレストラン。今日は知人のフランス人に誘われて、「アスパラガスとチーズビュッフェのスペシャルディナー」というイベントに出かけることにした。 料理はアミューズのアスパラガスのムースから始まり、ホワイトカラーアスパラガ…

「魚ます」

そろそろ帰ろうかと駅に向かう途中、見慣れない看板を見つけた。よくあるキッチュなチェーン店風だが、こういう店も一度は入ってみるのが、私のポリシー。あとで調べてみると、「ます家」「まんまみーや」などを展開するフロンティアグループの経営。一階は…

「酒菜家」

この店へ来たのは、何年ぶりだろう。このブログを始める前、自分のホームページに「私の好きな居酒屋」というコーナーを作っていた時に紹介したことがあるが、それから一〇年以上は経っているはずだ。そのときには「若者向けの雰囲気は、好みが分かれるかも…

「さしあげ亭」

池袋には昔からの富山料理の店があったはずだが、閉店したようだ。いま残っているのは、この店。開店がいつだったかわからないが、さほど古い店ではない。 新宿とここの二店だと思うが、厨房は奥にあり、バイトの店員が運んでくるスタイルで、雰囲気はチェー…

「日南市じとっこ組合 世田谷経堂店」

みやざき地頭鶏を看板に掲げるチェーン店。存在は前から知っていたが、今日初めて入った。 解説によると、みやざき地頭鶏とは天然記念物の地頭鶏の雑種第二代とのこと。炭火焼き(中一二八〇円、大一九八〇円)を注文すると、底が浅めの網籠のような網を炭火に…

久住昌之『昼のセント酒』

名作の誉れ高いマンガ『孤独のグルメ』だが、主人公の井之頭五郎は酒を飲まない。だから、何となく原作者の久住昌之も酒を飲まないものと思っていたら、実は酒好きらしい。本書は作者が、東京のあちこち(第六話だけは北海道だが)を散策したあと、銭湯に入り…

藤木TDC『昭和酒場を歩く──東京盛り場今昔探訪』

休刊になってしまった『荷風!』は、いい雑誌だった。アカデミックな香りが強い『東京人』とは対照的に、猥雑な盛り場性を濃厚に湛えた本の造りが魅力的で、号によってややムラがあったとはいえ、十分な情報量があり、読み応えがあった。なかでも藤木TDCの書…

デフレに、格差に、ノスタルジー。

19日のDIGは、『デフレに、格差に、ノスタルジー。居酒屋から見えるニッポンの現代!』というタイトルでした。藤木TDCさん、倉嶋紀和子さんと、CMなしで一時間、たっぷりお話しさせていただきました。podcastも配信されています。公開は放送後一週間らしいの…

TBSラジオのDIGに出演します。

今夜、TBSラジオのDIGという番組に出演します。テーマは「居酒屋から見える現代」で、対談相手はルポライターの藤木TDSさんと、『古典酒場』編集長の倉嶋紀和子さん。放送時間は午後10時〜11時53分ですが、出演するのは10時25分頃〜11時25分頃です。生放送で…

浅草「酒の大枡・雷門店」

昼酒の二軒目は、ここにした。基本は酒販店だが、横にバーコーナーがあって、日本酒を数十種類から選んで飲むことができ、簡単な肴も出す。貼り紙に「春のぬる燗フェア」とあり、出羽桜の桜花吟醸を燗で出すというので、いただいてみた。もともと淡麗な酒だ…

浅草「神谷バー」

というわけで、向かったのはここ。正月には入れなかったので、再挑戦というわけである。まずは生ビール。ここはスーパードライだが、郷では郷に従え。やむを得ない。 次にいただいたのは、このアサヒスタウト。スタウトとは元来、英国風の上面発酵させた濃色…

浅草寺・伝法院

新学期が始まる前の、つかの間の休日ということで、浅草へ。 東京中が廃墟と化した関東大震災の時、浅草寺はほぼ無事だった。さすが浅草寺は御利益があると讃えられたが、東京大空襲では本堂・五重塔など大半が消失する。大きな建物で唯一焼け残ったのが、伝…

西荻窪「仙の孫」

この日は、退職する教員の送別会で西荻窪へ。なぜ大学から遠く離れたこんな場所になったかというと、退職する教員のなかに、どうしても東日本の食材は食べたくないというわがままな人がいたから。この店は、食材の出所がはっきりしていて、野菜は大分産の有…

石神井川の夜桜と「やきとん万備」

今年も、石神井川の桜を見に行った。私のいちばん好きな花見スポットである。なかでも私が好きなのは、都営三田線板橋駅から東武東上線中板橋の間の流域。水面が護岸のかなり下にあって、川の両岸から枝が伸び、まるで渓谷の桜のような景観である。少し露出…

今年の花見酒

今年も、砧公園で花見酒をした。朝の気温はわずか四度で、午後になっても十二度までしか上がらない。しかも曇りで、冷たい風が吹く。花見酒を始めた時は、あまりの寒さに二、三杯で帰ろうかと思ったが、飲むうちに気分がよくなり、けっこう長居をしてしまっ…

桜台「秋元屋」

科研費のプロジェクトで十数人の学生にアルバイトを頼んでいたが、年度も終わり卒業する学生もいるので、打ち上げをすることに。連日超満員のこの店に九人も入るのは難しいということで、開店直前に電話を入れて席を確保。ほぼ開店とともになだれ込んだ。お…

浦和「おがわ」

太田和彦の居酒屋紀行をプロデューサーとして担当していた小川洋一さんが、昨年一一月に開いた店。もうあちこちで話題になっているが、私は初めての訪問。 名店となるべくして生まれた店といっていい。何しろ、全国の名店を知り尽くした人が満を持して開いた…

「木こり」

経堂まで戻り、もう一軒。この店、ふだんは東京農大生のたまり場のようなところがあり、敬遠しがちなのだが、春休みの今日はひっそりしている。実は日本酒の穴場である。東京農大の醸造科学科には全国から蔵元の後継者たちが集まっている。この店の常連とな…

大山「鏑屋」

せっかく大山まで来たので、もう一軒。私は初めてだが、けっこう評判のいい店らしい。左側にカウンター席、右側にテーブル席があり、三五人ほど入れるだろうか。 「ひなた」でだいぶ食べていたので、料理はもつ煮込みだけにしたが、これが土鍋に白味噌仕立て…

大山「やきとんひなた」

以前から紹介している上板橋の「やきとんひなた」に、二号店ができた。場所は、三駅離れた大山で、南口からハッピーロードのアーケード通りと反対側に出て、二本目を右に曲がったところ。立ち上げの一時期、上板橋店はお休みとのことで、店長もこちらにいた…

本郷「棲鳳閣」

今日は、東京大学の社会科学研究所で研究発表会。ほとんど身内の集まりだが、何とか形になった。その懇親会の会場が、ここ。 店の看板は「中華料理&ジビエ料理」。つまりは、鹿肉を使った中華料理が名物の中華料理店である。その内容はというと、鹿肉の黒胡…